子宮頸癌の発症はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が主な原因である。HPVは発がんウイルスであるが、型によりがんへの関連度が異なることが知られている。子宮頸癌では高リスクタイプの16型と18型が大半を占めることが知られている。中でもHPV16は世界的にも国内でも陽性率が高いことから、HPV16由来のがん遺伝子であるE6およびE7を標的として、HPV特異的T細胞による免疫療法の検討を行うことを目的とした。 このため、健常人末梢血単核球細胞からナイーブCD8陽性T細胞を分離して抗原提示細胞と混合培養することで、HPV特異的T細胞を誘導することを試みた。 標的としたE6タンパク質およびE7タンパク質はHPVの型により遺伝子変異が存在することがわかったので、まず既知のエピトープ配列の中で、HPV16の中で共通して保持されているエピトープを用いて、特異的T細胞の誘導を行うこととした。 抗原提示細胞としては、自己由来樹状細胞、または自己由来CD40活性化B細胞に既知のエピトープ配列部分を含む長鎖ペプチドを混ぜた細胞を使用した。複数回刺激を行い。特異性をIFNgamma産生にて判定した。複数のドナーで同様の実験を行ったが、特異性は少し検出されるものの、非常に誘導される特異的T細胞の割合が低いものと推測された。そこで、次に頻度の低いT細胞を濃縮するための実験を想定して、再度誘導実験を行おうと準備していたところで、帰国が決まり以降の実験は実行できなかった。 また計画としていた、患者検体からの解析も行うことができなかった。
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