研究課題/領域番号 |
20K18242
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
寺田 小百合 山形大学, 医学部, 医員 (40795697)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | hidden hearing loss / cochlear synaptopathy / HMGB1 / 内耳再生 |
研究実績の概要 |
近年、強大音暴露による一過性聴覚障害後に、通常の聴力検査は正常であるにも関わらず、騒音下での聞き取りが著明に低下するhidden hearing lossという病態が注目されている。この原因として、これまで聴覚障害の原因とされていた有毛細胞の障害より先に、内有毛細胞と聴神経間のシナプスが障害されることが考えられており、cochlear synaptopathy (primary neural degeneration)と呼ばれている。これまでの感音難聴の治療は、有毛細胞の保護や再生に主眼を置いた治療であったが、今後は有毛細胞のみならず、聴神経の再生治療の開発が必要である。 本研究では近年、自己の骨髄MSCの誘導を介して組織修復に働く蛋白として注目を集めているhigh-mobility group box 1 (以下HMGB1)を用いた聴神経再生による感音難聴治療の開発を目指している。 今年度はHMGB1の蝸牛神経障害に対する再生効果をin vivo実験系で検討するために、まずはcochlear synaptopathyモデルの作製を目指している。機能評価のためDPOAEを購入したが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、設置に必要な技術員の移動が制限されたため稼働可能となったのが年度末であった。現在は導入されたDPOAEを用いながら音響曝露によるcochlear synaptopathyモデルの作製に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度より、先行研究として、防衛医科大学校の水足らとの共同研究を開始し、laser-induced shock wave(LISW)を用いたcochlear synaptopathyモデルの作製を行っている。HMGB1の蝸牛神経障害に対する再生効果をin vivo実験系で検討するため、機能評価の目的でDPOAEを購入したが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、設置に必要な技術員の移動が制限されたため、稼働可能となったのが年度末であり、当初の予定よりも遅れを生じている。現在は、先行研究の共同研究をもとに、音響曝露によるcochlear synaptopathyモデルの作製を行い、DPOAE、ABRによる機能評価を行っている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
音響曝露によるcochlear synaptopathyモデルは、我々が以前からおこなっていた先行研究をもとに進めていく方針である。先行研究では、軽度音響曝露群(125dB、2時間)、中等度音響曝露群(125dB、3時間)、高度音響曝露群(130dB、2時間)の3群にわけて検討を行ったが、すべての群において曝露後2週間が経過しても中等度以上の難聴が残存した。このためさらに条件を変更し、これまでの報告をもとに、88dBまたは98dBまたは108dBで2時間または4時間などの条件で障害程度の検討を行う。障害の程度については音響暴露後24時間で一過性閾値上昇を確認する。作製した障害モデルが適正かどうかは、DPOAEおよびABRの閾値回復後にABRのI波振幅で確認する。障害モデルが完成したのちには、コントロール群(生理食塩水投与)と治療群(HMGB1局所投与)に分け、HMGB1の治療効果について検討を加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、研究に必要な技術員の移動が制限されたり、国内・国際学会が延期されたりオンライン開催になったりしたため、令和2年度に使用予定であった人件費や旅費を使用しなかった。令和3年度の助成金については、cochlear synaptopathyモデルの作製のための物品費や、学会参加のための旅費などに使用する予定である。
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