研究課題/領域番号 |
20K18243
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高橋 秀行 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70770460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害薬 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年登場したシングルセル解析技術を用いて、頭頸部癌患者の癌微小環境および全身で生じている免疫系の変化を個々の細胞ごとに、かつ網羅的に解析し、従来の手法では発見出来なかった新たな細胞集団や新たな免疫系マーカーの同定を目指している。2020年度は、ヒト末梢血検体を用いたmass cytometry解析技術の導入と、flow cytometryを用いた従来型の解析を並行して行った。Mass cytometryでは、ヒト末梢血中のリンパ球をプロファイリングし、そのサブセットや免疫チェックポイント関連分子の発現について網羅的に解析する手法を導入し、実際に患者末梢血を用いて解析を開始した。具体的には、免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体薬の投与前後における末梢血中リンパ球の変化について、治療前後の末梢血を解析、比較した。さらに、抗PD-1抗体薬の奏効症例と無効症例を比較検討した。この結果、治療奏効群と無効群との間に、治療開始前の末梢血リンパ球プロファイルの差異を認めなかった。治療前後の比較では、奏効群ではエフェクターT細胞の割合が治療後に増加していた一方で、無効群では治療前後で有意な変化を認めなかった。T細胞におけるPD-1の発現は、奏効群・無効群ともに治療前後で著明に減少していた。さらに、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、エフェクターT細胞のサブセット別に解析を行うと、抗PD-1抗体によるPD-1発現抑制効果は全てのサブセットで等しく認められた。こうした結果は依然奏効率の低い免疫チェックポイント阻害薬に対し、上乗せ効果を狙った治療戦略を検討するのに有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を始めるに先行して、すでに院内の倫理委員会の承認を得て患者検体の収集を行っていたため、本研究開始後すぐに解析に移ることができた。また、mass cytometryの実施にあたっても、外注先とのやり取りを円滑に行うことで、スピード感を持ってすすめることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き免疫チェックポイント阻害薬の治療前後における末梢血プロファイリングの症例を蓄積してゆく予定である。さらに、HPV陰性癌・陽性癌との比較や、腫瘍微小環境における腫瘍浸潤リンパ球の分離と解析、転移リンパ節と非転移リンパ節におけるリンパ球プロファイルの比較等の実験系を検討している。
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