研究課題/領域番号 |
20K18249
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
喜夛 淳哉 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (70868893)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノスーツ法 / 腫瘍循環細胞(CTC) / リキッドバイオプシー / 中咽頭癌 / HPV |
研究実績の概要 |
ナノスーツ法は短時間で簡便に試料周辺にナノ薄膜を形成させ、電子顕微鏡で濡れた試料を立体構造が保たれたまま高倍率・高分解能で観察できる革新的な技術である。循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells: CTC)は、血液腫瘍マーカーよりも病勢や治療効果を反映する可能性が示唆されており注目されている。しかし中咽頭癌を含めた頭頸部癌での報告は少ないのが現状である。CTCの微細構造に着目した報告やHPVなどのウイルスが感染したCTCを直接観察した報告は存在しない。今回CTCをナノスーツ法で観察する新手法を確立し、HPVに感染したCTCを微細構造が保たれた状態で観察及びリアルタイムでモニタリングを行うことで、HPV陽性中咽頭癌の病勢や予後判定を行うことを目的とする。さらに早期癌スクリーニングへの応用も目指していく。 HPVタイプ6又はタイプ11が陽性となった喉頭乳頭腫に対し、免疫染色でHPV-L1(カプシド蛋白)が陽性となる部位、RNA-ISH(in situ hybridization)でHPV-E4(ウイルス粒子の形成、放出に関与)する部位が相関することを同定した。さらにその部位をナノスーツ法を用いて、走査型電子顕微鏡で観察すると約50nmの微小粒子を核内に多数認めた。これらはHPV粒子であると考えられた。 今年度はHPV粒子観察技術の確立に成功した。観察技術をHPV陽性中咽頭癌組織やCTCへ応用し、さらに研究を推進する予定である。ナノスーツ法を用いたCTC解析は他の癌研究にも応用可能な技術となる可能性があり、社会的なインパクトが大きいものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は組織上でのHPV粒子観察技術の確立に成功した。本手法の確立により、以後のCTC解析がスムーズに行う事ができるものと考えられる。本年度中にCTCの解析手法まで確立する予定であったが、現在実施中の状況のため研究は当初よりやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いたCTCを模倣したモデルを作成し、CTC回収キットであるScreen Cellを用いて回収、ナノスーツ法を用いてHPV粒子の同定を行う一連の解析手法を今年度前半で確立させる予定である。以後は実際に患者より採取した血液サンプルを用いて解析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は組織上でのHPV粒子観察技術の確立に成功した。本年度中にCTCの解析手法まで確立する予定であったが、計画よりやや遅れている状況である。このため、実際に購入予定であった物品の購入が遅れており、次年度使用額が生じている。今後の研究計画の大幅な変更はないため、使用計画にも大きな変更はない。順次必要な物品を購入する予定である。
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