研究課題/領域番号 |
20K18250
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
今井 篤志 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (30794309)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | クリニカルシーケンス / リキッドバイオプシー / 腫瘍循環細胞 / セルフリーDNA / 個別化医療 / 上皮間葉移行 / 薬剤抵抗性 / 原発不明癌 |
研究実績の概要 |
クリニカルシーケンスが注目される中、リキッドバイオプシーを用いて腫瘍循環細胞やセルフリーDNAを高感度かつ高精度で分析する技術が競って開発されている。頭頸部癌においては、免疫チェックポイント阻害薬の登場で化学療法の選択肢が増え、薬剤耐性に関連する可塑性 (plasticity)や不均一性 (heterogeneity)を備えた癌細胞の病態の経時的分析が、個別化医療の鍵になると考えらる。申請者はHPV関連中咽頭癌のcfDNAからのHPV検出に加え、治療前後から再発転移を含む経時的な臨床経過との関連を告した。しかし、HPV非関連癌のリキッドバイオプシーへの応用はなされていない。上皮間葉移行は癌の浸潤・転移だけでなく薬剤抵抗性の獲得に深く関与している。今回、エピジェネティックス変化を含む上皮間葉移行を解析することで病態・治療効果・予測に関わるHPV関連・非関連頭頸部癌のバイオマーカーを確立したいと考えた。 HPV非関連癌についてはリキッドバイオプシーの特異的なマーカーは現段階で報告されていない。早期診断だけでなく、薬剤の治療効果予測因子をより正確に解析できる手法の開発が望まれている。今回、腫瘍の不均一性による薬剤耐性を解明するためには腫瘍循環細胞 (CTC)の経時的なモニタリングに着目する必要があると考え研究を進めている。 2021年度は新たに、68サンプルのcfDNA収集を行った。HPV関連中咽頭がんにおいて、CALML5、DNAJC5G、LY6D遺伝子のDNAメチル化情報を解析して、リキッドバイオプシーによるモニタリングの一定の有効性を確認している。2022年度は、原発不明癌におけるリキッドバイオプシーによって原発部位が中咽頭が疑われる症例のCALML5、DNAJC5G、LY6D遺伝子のDNAメチル化情報を解析して、一定の成果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リキッドバイオプシー、CTC回収・cfDNA抽出頭頸部癌患者に対しリキッドバイオプシー (末梢血20ml;最初にCTCを回収、残りの血液からcfDNAを抽出する)を治療前、治療直後、以後3カ月おきに行う予定である。2020年度までに、中咽頭癌21症例、口腔癌2例のcfDNA収集を行った。2021年度は、中咽頭3症例、口腔癌5例、原発不明癌5例のcfDNA収集を行った。2022年度は、中咽頭2症例、口腔癌1例、原発不明癌5例のcfDNA収集を行った。 cfDNAのDNAメチル化情報を解析して、リキッドバイオプシーによるモニタリングの一定の有効性を確認している。
|
今後の研究の推進方策 |
cfDNA解析を発展させて特にHPV非関連癌のEMTについて解析したいと考えている。分化した癌細胞にEMTが生じて誘導されるがん幹細胞化が、新生能・転移・再発に重要な役割を担っていると考えられる。CTCによるEMTを調べることによりで薬剤耐性のタイミングや転移再発メカニズム解明につなげたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、リキッドバイオプシーによるctDNA回収の実験を継続的に行い、リアルタイムPCRによるメチル化解析を継続した。また、CTC解析、免疫染色などを行う準備を行い完了した。2023年度は、CTC解析、免疫染色を行い研究を終了する予定である。
|