研究課題
クリニカルシーケンスが注目される中、リキッドバイオプシーを用いて腫瘍循環細胞やセルフリーDNAを高感度かつ高精度で分析する技術が競って開発されている。頭頸部癌においては、免疫チェックポイント阻害薬の登場で化学療法の選択肢が増え、薬剤耐性に関連する可塑性 (plasticity)や不均一性(heterogeneity)を備えた癌細胞の病態の経時的分析が、個別化医療の鍵になると考えらる。申請者はHPV関連中咽頭癌のcfDNAからのHPV検出に加え、治療前後から再発転移を含む経時的な臨床経過との関連を告した。しかし、HPV非関連癌のリキッドバイオプシーへの応用はなされていない。上皮間葉移行は癌の浸潤・転移だけでなく薬剤抵抗性の獲得に深く関与している。今回、エピジェネティックス変化を含む上皮間葉移行を解析することで病態・治療効果・予測に関わるHPV関連・非関連頭頸部癌のバイオマーカーを確立したいと考えた。HPV非関連癌についてはリキッドバイオプシーの特異的なマーカーは現段階で報告されていない。早期診断だけでなく、薬剤の治療効果予測因子をより正確に解析できる手法の開発が望まれている。今回、腫瘍の不均一性による薬剤耐性を解明するためには腫瘍循環細胞 (CTC)の経時的なモニタリングに着目する必要があると考え研究を進めている。2021年度は新たに、68サンプルのcfDNA収集を行った。HPV関連中咽頭がんにおいて、CALML5、DNAJC5G、LY6D遺伝子のDNAメチル化情報を解析して、リキッドバイオプシーによるモニタリングの一定の有効性を確認している。2022年度は、原発不明癌におけるリキッドバイオプシーによって原発部位が中咽頭が疑われる症例のCALML5、DNAJC5G、LY6D遺伝子のDNAメチル化情報を解析して、中咽頭癌を検出できる可能性を示した。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Scientific Reports
巻: 13(1) ページ: 5514
10.1038/s41598-023-32486-8
Anticancer Research
巻: 43 ページ: 2859-2864
10.21873/anticanres.16455