研究課題/領域番号 |
20K18253
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
村井 綾 岡山大学, 大学病院, 医員 (00780834)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 嗅覚障害 / 再生医療 / 軸索ガイダンス |
研究実績の概要 |
嗅覚受容体MOR29AとMOR29Bに蛍光標識した遺伝子組み換えマウス(MOR29ABマウス)に対し、嗅細胞の軸索を物理的に切断(軸索切断)を行い嗅覚障害モデルマウスを作成した。軸索切断後にSemaphorin3A阻害薬を点鼻投与し、嗅細胞の再生、軸索伸長の過程を検討した。軸索切断後2週間後から点鼻投与を開始した群では軸索切断を行っただけのコントロールと比較して、嗅細胞の回復過程に差を認めなかった。そこで、軸索切断直後から点鼻を開始するものとして2週間点鼻投与群と3週間点鼻投与群にわけて軸索切断後42日後に嗅球を観察したところ、3週間投与群のほうが、軸索伸長をみとめた。以降、3週間点鼻投与を行い、嗅上皮と嗅球の嗅細胞の再生過程の検討を行っている。 MOR29ABウスに軸索切断を行い、嗅覚トレーニングを実施した。こちらは直後からではなく、嗅細胞が消失し新生嗅細胞が現れはじめる軸索切断後2週間から嗅覚トレーニングを開始した。嗅覚トレーニングはT&Tオルファクトメーターに使用されている5種の化合物を使用した。各においを綿球に浸し、軸索切断したマウスに5分間かがせた。軸索切断後42日後に嗅上皮と嗅球を取り出し観察をおこなった。嗅球における嗅細胞の伸長はやや嗅覚トレーニング群が長くなっていたが、投射位置の改善は明らかではなかった。嗅上皮は生理食塩水をかがせたコントロール群と比較して、有意に嗅上皮の厚みが増しており、嗅覚トレーニングは嗅細胞の回復を促進させると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Semaphorin3A阻害薬投与群では嗅細胞軸索伸長は伸びたが、投射位置の回復には有意な影響を及ぼさなかったため、投与方法や投与時期についての検討を繰り返していたため遅れを生じている。また嗅覚トレーニングでは嗅細胞の再生を促進しているが、嗅細胞軸索には反映していないため今後の検討課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
まず嗅覚トレーニングが嗅細胞を回復させる分子学的メカニズムの検討を行う。無臭の物質(今回は生理食塩水)と5種類のにおい物質をかがせた群では有意に嗅細胞の回復が異なっていた。他の報告では神経栄養因子の増加がみられる報告があるが、なにが嗅細胞回復促進に役立っているのかが検討課題とする。Semaphorin3A阻害薬と軸索ガイダンス因子のelectroporation法の検討をひきつづき行っていく。
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