研究課題
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)関連中咽頭癌は化学放射線治療に対する感受性がよく、HPV陰性中咽頭癌と比較し予後が良好である。そのため、中咽頭癌はHPV感染の有無により病期分類が大きく異なるものとなっている。しかしながら、HPV関連中咽頭癌の中にも予後不良な経過をたどる例は依然として存在しており、その理由は明らかではない。一方、近年癌微小環境における癌細胞と神経細胞の相互作用が癌の進展に関連することが明らかになった。本研究ではHPV関連中咽頭癌発癌機構における腫瘍関連神経の機能を明らかにすることで、HPV関連中咽頭癌予後不良群に対する新たな治療法開発へつなげることを最終目的として、以下の研究を行う。1HPV関連頭頸部癌細胞由来エクソソームによる腫瘍関連神経新生の評価2RNA sequencingによるエクソソーム中の腫瘍関連神経新生へ関わるmicro RNAの同定3新生した神経によるHPV関連中咽頭癌の増殖促進能の評価4HPV関連中咽頭癌の薬剤耐性機構の解明および予後不良因子の同定。当該年度は昨年度に引き続き、HPV関連頭頸部癌細胞由来エクソソームにおける神経新生に関わるmicro RNAを同定するため、複数のバイオインフォマティクスアルゴリズムを用いた検証を行った。今後は現在絞り込んでいるmicro RNA群より最も神経新生に関わると考えられるmicro RNA(miR X)を同定し、HPV陰性頭頸部癌とは異なるHPV特異的な機序の解明についても検証を行うことで、miR Xを介したHPV関連頭頸部癌細胞と神経細胞との相互作用を検証する予定である。
3: やや遅れている
今年度は昨年度に引き続きHPV関連頭頸部癌細胞株由来エクソソームを用いて腫瘍関連神経新生の評価を行い、HPV関連中咽頭癌細胞由来エクソソームにおける神経新生に関わるmicro RNAを調べる予定であった。候補となるmicro RNAの絞り込みに時間を要しているため、昨年度より新たにOpen databaseを用いた複数のバイオインフォマティクスアルゴリズムによるアプローチを追加し、HPV関連中咽頭癌の神経新生調節を担うmicro RNA(miR X)群の絞り込みを試みている。
上記アプローチにより絞り込んだmiR Xが神経細胞に及ぼす効果をin vitroおよびin vivoで検討すると共に、HPV特異的な機序の解明についても検証を行うことで、HPV関連頭頸部癌細胞と神経細胞との相互作用を解明する実験を行う。
目的とするmiR Xの絞り込みに時間を要しているため、miR Xをターゲットとして行う予定であった実験のための物品費分を次年度使用予定とした。次年度使用額は今年度に行う予定であった実験を行うための物品費用にあてる予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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