研究課題/領域番号 |
20K18265
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
栗原 渉 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90826926)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 難聴 / コモンマーモセット / バイオマーカー / MRI / 行動学的解析 |
研究実績の概要 |
「認知症」の最大のリスクファクターである「難聴」を多角的・経時的に解析するために、申請者は霊長類難聴モデルを用いた行動解析に取り組んできた。本研究では、難聴に起因する認知機能・バイオマーカー変化をフェノタイプと見立て、その原因となる脳機能・構造変化を超高磁場MRIにより明らかにすることを目的に研究を進めている。 小型霊長類コモンマーモセットに強大音を負荷することにより、恒久的聴覚閾値上昇を認める音響外傷モデルを作製した。同モデルを用いて、音響負荷前、音響不可後1, 3, 6, 12ヶ月後における行動学的評価およびMRI撮影を行った。行動学的評価としては以下の項目を測定した。視覚関連行動としてBobbing(首を振り周囲を確認する動作)、Grabbing(ケージを掴み周囲環境を確認しようとする動作)、call(発声)回数、ストレス関連指標としてGrooming(毛繕い)やscratch行動。これらに加えて、給餌による報酬系を用いたコモンマーモセット用タッチパネルによる認知機能審査システムを構築した。MRIによる中枢解析としては、以下の項目を測定した。各脳領域における機能的接続性の評価のための安静時脳活動MRI、脳体積の減少や増加といった形態特徴を同定するためのVBM(Voxel-based morphometry)、各脳領域の器質的接続性を評価するためのDTI(Diffusion Tensor Imaging)。 現在までに得られた結果として、音響負荷後の個体において、行動学的解析では視覚関連行動の変化が、MRI解析ではそれに対応するように視覚関連領野の構造的・機能的変化が捉えられた。本実験プラットフォームを用いることで、脳機能・構造変化に基づいたクロスモーダル変化が解析可能であることを強く示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、難聴によるクロスモーダル変化が、MRIおよび行動学的解析から捉えられている。
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今後の研究の推進方策 |
行動学的解析においては、評価項目のブラッシュアップ、音声解析の追加を行う予定である。音声解析を行うことで難聴前後でのcallの種類およびその数の変化を特定することが可能となり、コミュニティにおける音声コミュニケーションの変化を解析することが出来る。さらに、評価項目として認知機能評価を組み込むことで、難聴と認知症の関連についてより詳細に解析していく予定である。MRIに関しては、関心領域を感覚関連領域から、認知情動に深く関わる領域へと拡大し、解析を展開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
難聴コモンマーモセットの観察期間を12ヶ月と当初の予定より延長したために、研究実施期間が延長している。研究継続のための次年度使用額が発生した。
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