本研究では、嗅神経芽細胞腫(ONB)における近赤外線光免疫療法(NIR-PIT)の適用可能性を調査した。まず、ONB組織からの患者由来のサンプルを用いて、糖鎖発現解析を行った。これにより、嗅上皮に反応する糖鎖結合タンパク質の存在が確認されたが、ONBに特異的に結合するタンパク質は見つからなかった。次に、RNAシークエンシング解析を行い、ONB組織の遺伝子発現プロファイルを明らかにした。この解析により、NIR-PITの標的となる可能性のある膜タンパク質が同定された。特に、ソマトスタチン受容体のサブタイプであるSSTR2がONB細胞の細胞膜に高度に発現していることが確認された。 さらに、ONBの細胞株を樹立する試みも行った。4例のONB組織から細胞を回収し、エクスプラント培養を行なったが、細胞の特性を維持することが難しく、細胞株の樹立には至らなかった。この結果、今後の課題として、NIR-PITの適応可能性を検討するためのONB細胞株の作成が挙げられる。 研究の成果は、ONBにおけるNIR-PITの標的となる可能性のある膜タンパク質の同定に貢献した。これにより、将来的にはNIR-PITを用いたONBの治療法の確立に向けた一歩が踏み出された。しかし、細胞株の樹立には課題が残る。今後は、細胞株の樹立やその特性の詳細な解析を行い、NIR-PITを用いたONB治療法の実現に向けた研究を進めていく予定である。
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