研究課題/領域番号 |
20K18271
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
美馬 勝人 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (40866109)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 頭頸部扁平上皮癌 / 癌エピゲノム / HPV / ヒストン修飾 / クロマチン構造 |
研究実績の概要 |
【目的】近年増加傾向にあるHPV関連頭頸部扁平上皮癌は非感染群と異なるエピジェノタイプを示すことが報告されている。本研究は、頭頸部扁平上皮癌においてHPV感染が引き起こす宿主ゲノム側のクロマチン構造変化、エンハンサー制御異常に着目した発癌分子機構の解明を目的とする。 【方法】HPV(+)/(-)頭頸部扁平上皮癌細胞株に加えて正常上咽頭不死化細胞株を複数使用してChIP-seqによる活性化ヒストン修飾(H3K4me1,H3K4me3,H3K27ac)、HiCによるクロマチン構造の網羅的解析を行った。HPV(+)頭頸部扁平上皮癌細胞株については4C-seqを用いてホストゲノム側のHPV相互作用領域(HPV interacting region : HPVIR)を同定した。 【結果】HPV(+)細胞株はホストゲノムに組込まれたHPV(integrated HPV)を有し、それぞれ異なるHPVIRを認め、その範囲も1-40Mbと一律ではなかった。一方、HPVIRでは共通して活性化ヒストン修飾の集約を認めた。さらに、エンハンサーの集簇から定義されるスーパーエンハンサーを算出したところ、HPV(+)細胞株に特異的なスーパーエンハンサーがHPVIR内に存在することが明らかとなった。また、同領域の遺伝子発現量はHPV(-)頭頸部扁平上皮癌細胞株や正常上咽頭不死化細胞株と比較して有意に増加しており細胞増殖に関わるシグナル伝達経路の遺伝子群を含んでいた。それら遺伝子について、siRNAによるノックダウンを行ったところ細胞増殖が有意に低下した。 【考察】HPVIRはエピジェネティックに活性化しており癌化に寄与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4C-seqを実行したことでHPVとの相互作用領域の特定に至り、領域内の癌化に寄与する候補遺伝子を選定する段階へと達しており概ね順調に進んでいる。 HPVIRはエピジェネティックに活性化しており遺伝子発現の亢進を来すと判明したが、integrated HPVがホストゲノムの活性化を引き起こしているかは不明である。現在、この分子機構の詳細を明らかにするべくintegrated HPVの機能解析を計画中である。
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今後の研究の推進方策 |
integrated HPVをノックアウトすることにより、機能解析を行う。具体的な実験手法としては、HPVゲノム全体を対象としたtiling sgRNAを設計しCRISPR/Cas9スクリーニングを行う。表現型を変える候補領域をまずスクリーニングにより選定する。次に候補領域のノックアウトを行い、RNA-seqの解析や細胞増殖抑制効果の確認を行う。臨床的意義の検証のため公共データベースを用いた情報解析、臨床検体による検証を計画している。
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