研究課題/領域番号 |
20K18274
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高相 裕司 金沢大学, 附属病院, 医員 (00866444)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 顔面神経 / CD38ノックアウト / 神経変性 |
研究実績の概要 |
マウスの顔面神経を切断後、切断部から顔面神経分岐部までを採取し切断部より末梢側でおん軸索、髄鞘の組織変化につき検討を行った。軸索をβ-Ⅲtubulinで、髄鞘をMBP抗体で蛍光免疫染色を行い、野生型マウスならびにCD38ノックアウトマウスでの組織学的変化につき比較検討を行った。 野生型マウスでは顔面神経切断後より直ちに軸索、髄鞘は変性が始まり、切断後7日目で変性は完成していた。CD38ノックアウトマウスでは顔面神経切断後、神経変性は野生型と同様に直ちに始まり切断後7日目で完成していたが、変性の程度は軸索、髄鞘共に有意に弱く、変性の有意な遅延を認める結果となった。 また、顔面神経切断後の炎症細胞の変化について、ミクログリア(マクロファージ)の抗体であるIba1抗体、好中球の抗体であるGr-1抗体を用いて検討を行った(当初CD45抗体を用いる予定であったが、CD45抗体は好中球、リンパ球共に染めることから、どの免疫細胞が変化しているかがわかりにくいため、検討を行った上で今回は用いなかった)。野生型、CD38ノックアウトマウスいずれも顔面神経切断後よりIba1陽性細胞の増加を認めたが、CD38ノックアウトマウスではその程度は有意に少なかった。一方Gr-1陽性細胞については野生型、CD38ノックアウトマウスいずれも顔面神経切断後1日目で増加のピークを認め、その後減少した。CD38ノックアウトマウスではその程度は少ない傾向が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初CD38ノックアウトマウスにおける末梢神経変性の遅延効果につき確認した上で、その原因としてCD38ノックアウトマウスにおける炎症細胞集積抑制やNAD濃度上昇が考えられることから、マクロファージ抑制やNAD前駆体投与によるNAD濃度上昇の神経変性に与える影響を検討する方針としていた。今回の研究ではCD38ノックアウトマウスにおいて想定通りの神経変性遅延効果が確認できたことから、この結果を元に次の段階へと移行することができるため、本研究は予定通りに進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
NAD前駆体であるNRを腹腔内投与し作成したNR投与マウスと野生型マウスにおける顔面神経核ならびに顔面神経末梢側の形態学的変化や炎症細胞に変化につき免疫染色で比較検討を行う。また、クロドロン酸リポソームを腹腔内投与しマクロファージ抑制モデルを作成し、野生型と顔面神経核ならびに顔面神経末梢側の形態学的変化や炎症細胞に変化につき免疫染色で比較検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を行うに際し様々な抗体や薬剤を購入する必要があり、また購入した抗体の中には染色がうまくいかずに十分な評価を行うことができなかったり、評価を行うために多量が必要なため複数回同様の抗体を購入するなどを行ったため、想定より多額の費用を要した。当初は多量の抗体を使用する見込みとなっていたため前倒しでの使用申請を多めに申請したが、その後実験が順調に進行したため想定よりも使用する抗体が少なかったため20万ほどの残額が生じた。
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