研究課題
DNAメチル化などの塩基修飾が癌化機構など多様な影響を与えることが広く認識されている。なかでも次世代シークエンサーの登場で近年分子生物学が発展し、RNA領域におけるエピトランスクリプトーム研究は広がりを見せている。我々はこれまで頭頸部癌において、腫瘍・正常検体を用いDNAメチル化を特に研究してきた。最近は、蛍光法を使ったRNAメチル化解析に取り組んだ。蛍光m6A測定法(EpiQuik m6A RNA Methylation Quantification Kit; Epigentek Group Inc.)にて頭頸部癌では癌部でm6A比率が高く、高m6A比率群は予後不良である結果を得ることができた。さらに、関連遺伝子群の解析及びノックダウン頭頸部癌細胞株を作成済みである。RNA修飾に関しての研究はまだ発展途上の分野である。我々は、頭頸部癌におけるRNA修飾に関して先駆的研究グループである。さらなる次世代とよばれるナノポアシークエンサーは、酵素反応を必要とせず、さらにcDNAを経ず、RNAそのものが直接1分子ごとにナノ孔を通過する際に生じる微弱な電流を計測することで塩基分子を識別することが可能である。今回我々はRNAを直接測定することでRNA修飾を損なわずに行え、ナノポアシークエンサーを使用したRNAメチル化解析法の確立(Direct RNA-seq)を行い、よりRNA修飾の実態にそった頭頸部癌におけるRNAメチル化と癌化機構についての知見を蓄積していきたい。本研究は、RNAを直接測定することでRNA修飾を損なわず、1分子ごと効率的に識別できるナノポアシークエンサーを使用したRNAメチル化解析法の確立を行い、よりRNA修飾の実態にそった頭頸部癌におけるRNAメチル化と癌化機構についての知見蓄積を目的としている。
4: 遅れている
これまでの研究で、頭頸部癌の癌部と正常部ペア44サンプルについては通常のm6A量測定にて解析済みであり、継続的に手術検体及びHPV非関連頭頸部癌症例のリキッドバイオプシーとしてのcfDNA, cfRNAの収集作業を開始している。HPV関連癌におけるLiquid biopsy(cfDNA)のDNAメチル化マーカーの選定をシークエンサー解析で行い、経時的な計測と臨床情報が相関することを確認している。現在、RNAメチル化解析法の確立(Direct RNA-seq)に取り組んているところである。
我々研究グループは、これまでのエピゲノム研究の経験から、ナノポアシークエンサーによる研究を頭頸部癌細胞株、手術検体のRNA修飾解析を行い、さらにリキッドバイオプシーによるリアルタイムでのモニタリングに応用にしていきたいと考えている。2021年度は、ナノポアシークエンサーを使った解析を始める予定である。
2020年度は、リキッドバイオプシーによるctRNA回収の実験が主であった。2021年度は、RNAメチル化アレイに取り組む予定である。エピクリプトーム修飾の定量化など予算使用額が増加すると予想される。
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