下咽頭癌、食道癌は飲酒、喫煙という共通のリスク因子を持つことから、重複癌としてみられることがおおい。そこに着目して、同様の原因で発生する腫瘍であるから遺伝子変異についても同様の特徴を持つことが推測された。そこで同一患者の重複癌検体を用いて、それぞれの遺伝子変異を網羅的に検索することで、遺伝子変異の共通性を調べることとした。 研究は予定していた通りのタイムラインで順調に進捗しており、現在のところ予定していた12患者24検体について遺伝子情報の解析が終了し、個別のシグネチャー解析も終了している。 下咽頭癌の組織と食道がんの組織を比較したところ同一人物内でも下咽頭癌、食道癌で遺伝子変異パターンは異なっていることが多いことが分かった。シグネチャー分析においては喫煙に関連したものや飲酒に関連したものを中心に認められたが、同様に両癌腫との関連は乏しい結果であった。追加でALDH2の遺伝子多型についても検討したが、これも遺伝子変異との関連は見いだせなかった。 本研究の結果より咽頭癌、食道癌で要因となる飲酒、喫煙は共通であるが、変異を起こす遺伝子は全く共通とはならず、それぞれの発がん要因は別であることが分かった。今後咽頭癌、食道がんの重複癌に対して予防や治療を行っていく際には、やはり異なったアプローチが必要となることが示唆された。 現在研究結果を論文に纏め、学会発表を行っており、本研究により得られた新たな見地を報告している。
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