令和3年度の計画に基づき、CTにより前庭水管拡大症(以下:EVA)と診断された29例55耳と聴力正常な63例91耳をコントロール例のデータの収集及び解析を行なった。両群間のアブゾーバンス(以下:ABS)、最大ABS周波数(以下:MAF)、共振周波数(以下:RF)における比較は、Wilcoxon順位和検定を用いた。ワイドバンドティンパノメトリー(以下:WBT)によるEVAの診断における有用性にはROC解析を用いた。 EVAのABSはコントロール群と比較し、226-840.9Hzにおいて有意に高く、1887.75-4237.85Hzにおいて有意に低かった。MAFにおいて両群間に有意差を認めなかった。EVAのRFはコントロール群と比較し有意に低かった。 WBTを用いたEVAの診断について、500HzのABSを独立変数としたROC解析において、カットオフ値を0.3098とした時の感度と特異度はそれぞれ76%、62%、AUC値は0.728であり、診断精度は中精度であった。3668.02HzのABSを独立変数としたROC解析を行ったところ、カットオフ値を0.7407とした時の感度と特異度はそれぞれ61.5%、69.1%、AUC値は0.686であり、診断精度は低精度であった。RFを独立変数としたROC解析において、カットオフ値を848.8とした時の感度と特異度はそれぞれ74%、75%、AUC値は0.764であり、診断精度は中精度であった。また、500Hzと3668.02のABSとRFを組み合わせると、陽性的中率100%でEVAの診断能を有していた。 以上のことからWBTはEVAの診断に有用であると考えられた。
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