唾液腺癌は、組織型が多彩であり発生頻度も少ないため、その診断及び治療には難渋する。一般的に唾液腺腫瘍に対する精度の高い良悪性鑑別は困難であり、2018年版の頭頸部癌診療ガイドラインでも唾液腺癌の術前細胞診における悪性診断の感度は60-75%程度にとどまり、限界があるといえる。 本研究は、穿刺吸引細胞診検体での(1) テロメラーゼ活性、(2) hTERTの免疫染色、(3) hTERTプロモーターのメチル化に基づいて唾液腺悪性腫瘍を術前に鑑別するための新たな診断ツールを開発することを目的とした。 学内の倫理委員会の承諾を得た研究計画書を用いて、患者様の了承を得て、唾液腺腫瘍手術時の検体採取を研究期間内に継続して行った。その結果、テロメラーゼ活性測定用の細胞診の検体及び組織検体を合計22人の患者さんから得ることが可能であった。PCR検査などによる、実際に検体を使用してのテロメラーゼ活性の測定に関しては、自施設では実行困難であったため、外部委託での方法も検討したが、同様に困難であったため、それ以降の研究遂行は行っていない。今回の研究期間内に、唾液腺腫瘍の診断方法に関する付随研究として、唾液腺腫瘍の一部である顎下腺腫瘍における迅速病理診断の有用性について調査した。海外においてもこの研究の報告はほとんどなく、その成果を海外雑誌に論文報告することは可能であった。 また、2022年度は、検体の収集だけでなく、顎下腺腫瘍における迅速病理診断の有用性について、国内での学会発表も行った。
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