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2020 年度 実施状況報告書

ミトコンドリア遺伝子変異における難聴特異的iPSを用いた病態解明と新規創薬

研究課題

研究課題/領域番号 20K18294
研究機関順天堂大学

研究代表者

荒井 慎平  順天堂大学, 医学部, 助手 (70836220)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードミトコンドリア遺伝子 / 遺伝性難聴 / 疾患特異的iPS細胞
研究実績の概要

遺伝性難聴は聴覚と言語発育の著しい障害を引き起こす極めて高度なQOLの低下をもたらす。言語習得後の遅発性難聴の原因として、アミノ配糖体に対する易受傷性を示す家系が報告され、ミトコンドリア遺伝子1555A>G変異が同定された。ミトコンドリアは大部分の細胞に存在する細胞小器官であり、核ゲノムとは異なる独自のゲノムを有している。アミノ配糖体による難聴の機序として、アミノ配糖体抗菌薬により主として蝸牛コルチ器が障害を受けることが報告されている。またこの変異によって、アミノ配糖体存在下でミトコンドリアにおける不良タンパク質が増加することも判明している。しかしながら、詳細な分子メカニズムは解明されておらず、根本的な治療薬の開発も実現していない。
従って、疾患特異的iPS細胞を応用することで遺伝性難聴の病態機序を解明し、新規の治療薬を見出す研究が難聴研究のブレークスルーとなり得る。ミトコンドリア遺伝子1555A>G変異による難聴患者からiPS細胞を樹立し、さらに内耳細胞への分化誘導を行い、正常iPS細胞由来の内耳細胞との形態・機能解析によって疾患特異的な病態が解明できる。また疾患の表現型を示す疾患由来iPS細胞を用いて、表現型を修復させる候補薬剤をスクリーニングする。
ミトコンドリア遺伝子1555A>G変異による遺伝性難聴由来のiPS細胞を用いた疾患モデルは疾患の発症メカニズムの解明、さらには新規治療薬の開発に有用となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ミトコンドリア遺伝子1555A>G変異患者の臨床データ集積と血液採取を施行した。
順天堂医院での遺伝子検査により診断されたミトコンドリア遺伝子1555A>G変異難聴患者より臨床データを分類。本学倫理委員会の承認およびインフォームド・コンセントの後、患者血液を収集した。
iPS細胞の樹立を血液細胞へエピソーマルプラスミドでの遺伝子導入(OCT3/4,SOX2,KLF4,L-MYC,LIN28,p53-shRNA)を行いiPS細胞を樹立。文科省「疾患特異的iPS細胞を用いた難病研究」岡野拠点にて赤松らが確立した手順に準ずる。我々の研究グループが既報したiPS細胞から内耳前駆細胞への分化誘導(Fukunaga, Stem Cell Reports, 2017)とiPS細胞から内耳有毛細胞への分化誘導法(Oshima, Cell, 2010)を改良し、iPS細胞より内耳発達過程の様々な分化度の細胞を作出する。

今後の研究の推進方策

近年の難聴遺伝子の発見によって、原因不明の多種多様な感音難聴が遺伝子異常に起因することが判明されてきた。申請者らは世界に先駆けて代表的な難聴遺伝子の変異モデル動物を開発し、それらの機能解析を展開してきた。現在でも申請者らのグループならびに理研や癌研の共同研究グループが中心となって遺伝性難聴の根本的治療の開発をリードしている。
内耳を標的とした遺伝性難聴では実際の生体試料をヒトから得ることは困難であるため、疾患の発症機構解明や創薬研究が制限されている。疾患特異的iPS細胞作製技術を導入することで患者由来の体細胞から幹細胞を経由し標的細胞へ分化させ、疾患モデルを作成することが可能となった。疾患特異的iPS細胞を用いてミトコンドリア遺伝子155A>G変異による遺伝性難聴の病態解析と創薬研究に応用することは遺伝性難聴の治療のブレークスルーとなる。近年の化合物合成・創薬技術の発展が目覚ましいことから、本研究の疾患モデル細胞が開発されれば、薬剤選抜の条件が整い、内耳への新規薬剤が今後5年以内に開発できることも期待できる。
本研究はミトコンドリア遺伝子155A>G変異による遺伝性難聴の分子病態・機序を解明する突破口を切り開き、根本的治療の現実化に正面から取り組むもので、画期的な技術を駆使している。これらの画期的な企画はこれまで全く創造されていない極めて独創性の高い研究である。この技術が臨床に適用されると、聴覚医学に新しい局面を迎えることができる。難聴に悩み、苦しむ数百万人の患者への大きな福音となり、国民生活の質的向上をもたらす極めて有意義な研究である。

次年度使用額が生じた理由

以下の実験を本年度に施行予定であったが、いまだ十分ではないため、次年度にこれらの実験に必要な使用額を計上した。
iPS細胞から内耳前駆細胞への分化誘導方法によってiPS細胞の浮遊培養後に接着培養を行い分化制御因子としてDkk1, SIS3, IGF-1(D/S/I)添加培養、その後のbFGF添加後に鶏杯卵形嚢細胞との共培養により分化誘導を行う。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] A Case of Glomangiopericytoma with a <i>CTNNB1</i> Mutation2021

    • 著者名/発表者名
      Arai Shinpei、Ito Shin、Anzai Takashi、Onagi Hiroko、Tsuyama Sho、Fukumura Yuki、Saito Tsuyoshi、Ikeda Katsuhisa
    • 雑誌名

      Practica Oto-Rhino-Laryngologica

      巻: 114 ページ: 195~201

    • DOI

      10.5631/jibirin.114.195

    • 査読あり
  • [学会発表] 分子病理学的検討により診断を確定した Glomangiopericytoma の 1 例2020

    • 著者名/発表者名
      荒井 慎平,伊藤 伸,安齋 崇,池田 勝久
    • 学会等名
      第82回耳鼻咽喉科臨床学会
  • [学会発表] 乾癬性関節炎の関与が考えられた難治性口腔・咽頭炎症例2020

    • 著者名/発表者名
      荒井 慎平 ,楠 威志 ,本間 博友 ,城所 淑信 ,賀屋 勝太 ,池田 勝久
    • 学会等名
      第38回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会

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公開日: 2021-12-27  

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