OSAは近年ますます増加傾向にある疾患である。OSAの病態を詳細に把握するにはPSGが必須であると考えられているが、入院を要するため検査できる施設には限 りがあり、すべての症例に検査することは困難である。そこで、OSAの病勢をPSG以外の検査で把握する方法がないかという考えに至り、OSAにおいてFENO値の変 動が認められること、特に鼻腔におけるNO産生が増加することに着目し、鼻腔NOがOSAの病態を反映するのではないかと推測した。 本研究に先立ってOSA患者における鼻腔NO値を推算し、その病勢マーカーとしての有用性について検証した。AHIで分類された重症度の高いOSA症例において鼻腔 NOは高値を示し、CPAP治療に至った症例に関しては、治療導入後に有意な低下を認めた(図2:河内理咲 他.OSAS患者における病勢マーカーとしての鼻腔NO.口 咽科2017;30(2):221 ~ 225)。睡眠中に反復する上気道閉塞に起因する酸化ストレスや炎症性サイトカインの上昇が、局所の気道粘膜においてiNOS発現の誘導、NO産生の亢進をもたらすと考えられる。 CPAP導入に至った重症OSA症例に対し、治療前後で鼻腔NOと鼻粘膜擦過液を比較検討した。 CPAP導入後に有意に鼻腔NOは低下した。鼻粘膜擦過液は、抗老化分子SIRT1、低酸素で誘導される転写因子HIF-1α、マクロファージの遊走や活性化に関係する蛋白MIFについて比較検討した。OSAでは低酸素ストレスでSIRT1発現が低下、HIF-1α発現が更新し、MIFやiNOS(誘導型NO合成酵素)が誘導される。導入後はSIRT1発現が増加し、HIF-1αは抑制されMIFやiNOSが抑制されていた。酸化ストレスの解除による病態であると推測された。
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