研究課題
がん組織では自身のエネルギー代謝の改変することが、免疫抑制を誘導など様々な経路を介してがんの進展に関与していることが明らかになってきている。本研究では、細胞外フラックスアナライザーを用いて、患者由来がん細胞の糖代謝能を、解糖系・ミトコンドリア呼吸にわけて、直接測定する。その結果から、糖代謝により4つのタイプ(糖代謝休止、解糖系亢進、ミトコンドリア呼吸亢進、糖代謝亢進)に分類し、それぞれにおける微小環境の免疫状態を解明することを目的としている。現在、現在、細胞外フラックスアナライザーで代謝解析を行った症例は20例と増えてきた。また並行して網羅的メタボローム解析を行ってきた。この方法は、組織中の代謝物質の種類や濃度を網羅的に測定・分析を行う事が可能である。網羅的メタボローム解析は、昨年より症例数を増やし、頭頸部扁平上皮癌23例、正常咽頭組織6例を用いて比較検討をおこなった。さらに、同じ症例を用いて、リアルタイムPCRによる代謝酵素などの遺伝子発現測定も追加し、頭頸部がん組織での代謝状態を多方面から解析を行った。がん組織における代謝状態をいろいろな手法で明確に、さらにそれを代謝状態によりタイプわけしたいと考えている。その上で、がん微小環境における免疫状態が、代謝タイプによって異なることを調べてく予定である。この研究が進むことで、代謝タイプにより最適な治療法が検討されるようになり、また代謝を改変することで治療効果を高めることに繋がっていくと期待している。
4: 遅れている
細胞外フラックスアナライザーで糖代謝解析を行った症例は、まだ20例となった。症例を重ねる中でわかってきたが、解糖系が亢進した症例はミトコンドリア呼吸も同様に亢進、解糖系が低下した症例はミトコンドリア呼吸も同様に低下いることがわかってきた。当初想定していた糖代謝に基づいた4つのタイプ(糖代謝休止、解糖系亢進、ミトコンドリア呼吸亢進、糖代謝亢進)に分類することは実際には困難であり、別の方法を考えなければいけない。網羅的メタボローム解析、代謝酵素などの遺伝子発現解析により、頭頸部扁平上皮癌と正常咽頭の代謝状態は大きく異なることが明らかになった。頭頸部扁平上皮癌組織では、遺伝子発現解析に基づき、解糖、五リン酸経路、トリカルボン酸サイクル、グルタミン代謝が亢進していた。これから、頭頸部扁平上皮癌では、エネルギー産生と構造的構成要素を強化していると考えられた。また頭頸部扁平上皮癌組織では、がん代謝物として知られる乳酸、コハク酸、グルタチオン、2-ヒドロキシグルタル酸、S-アデノシルメチオニンなどが増加・蓄積していることが明らかになった。がん組織における代謝状態に関する解析は順調に進んでいる。しかしながら、免疫状態における評価が全くできてないので、「遅れている」と判断した。
がん組織の代謝に関する解析は順調に進んでいる。しかしながら、当初の予想とは異なる結果も出てきていて、どのように対応するか検討中である。具体的には、糖代謝による4つのタイプの分類ができないので、糖代謝が亢進・非亢進の2つのグループに分ける方法も考えている。また現在のところ、免疫状態に関する解析が全くできていないので、組織中の免疫細胞の解析を早急に行う予定である。
研究計画が遅れており、そのために残金が発生した。最終年度であり、遅れを取り戻すように研究を迅速に進めていく。そのための消耗品の追加などに使用する予定である。
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