研究課題/領域番号 |
20K18313
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
手島 直則 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (10749146)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 耳下腺腫瘍 / マイクロRNA / 診断 |
研究実績の概要 |
耳下腺腫瘍の吸引細胞診や針生検の検体から病理組織型に特異的な融合遺伝子の検出法を開発し、唾液腺癌の術前分子病理診断法を確立することを主目的としている。本研究は耳下腺癌患者の腫瘍側と健側の耳下腺から流出する外頸静脈内の血液中に存在するマイクロRNA (miRNA) および代謝産物の情報を取得し、両側血液内の検出量を比較検討することで、耳下腺腫瘍に特異的な新たなバイオマーカーを探索する。さらに再発・転移に関わる予測因子や新たな治療法の開発につながるターゲットを同定することへつなげていきたいと考えている。我々の施設では2002年より唾液腺の専門外来を開設しており、パイロット・スタディーとして、甲状腺腫瘍と唾液腺腫瘍の手術に際し、腫瘍側、健側それぞれの流出静脈から血液検体を採取し、特異的なmiRNAの探索研究を行っており、先に挙げたように候補となるmiRNAを同定している。特に、耳下腺腫瘍は悪性腫瘍であれば、一側性のみの発生が大多数である。腫瘍は患側の外頸動静脈からの血流支配を受けており、左右の耳下腺への血流が混入することがないため、腫瘍成分と健側の正常耳下腺組織の血液を厳密に比較することができる。そのため、同時に両側からの血流を採取することで患側と健側の差異を同定し、有用な分子標的マーカーが検出できる可能性が高いと考えている。これまで約3例の解析が終了しており、研究機関においてパイロットスタディで行ったデータを基にして、症例を集積して追加検討し、得られた結果を英文誌にて報告することを目標としている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はCOVID-19による手術枠減少の影響や受診控えもあり、耳下腺悪性腫瘍症例が1例のみの受診であった。2021年度は緩やかに症例集積数が増加しており、4例の耳下腺悪性腫瘍症例の集積を行った。本年度に集積した症例は全例、研究への同意を得ており、手術時に、血液、組織のサンプリングが終了しており凍結保存として解析可能な準備体制は整備されている。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年に受診した耳下腺悪性腫瘍患者からも同意取得し、研究対象症例を可能な限り蓄積する。また本年秋頃には保存した研究検体からマイクロRNAを同定する予定である。全症例の解析結果を元に臨床所見とマイクロRNAの検出量からそれらの関連性を確認する。もし、悪性腫瘍症例のみで症例数を集積することが困難であった場合には良性腫瘍に関しても検討を行う予定である。血液検体と摘出腫瘍から検出されたマイクロRNAとその検出量、耳下腺腫瘍との関連性について検討し、関連性が発見されればその結果を論文化して国内外に発表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
耳下腺腫瘍検体と採取した血液検体からマイクロRNAを同定する予定であり、その解析や検出に使用する。解析に必要な機器購入や解析結果を元に論文化や国内外関連学会での発表に使用することも予定している。
|