研究実績の概要 |
耳下腺腫瘍の穿刺吸引細胞診や針生検で得られた検体から病理組織型に特異的な融合遺伝子の検出法を開発し、唾液腺癌の術前分子病理診断法やバイオマーカーの確立することを主目的とした。本研究は耳下腺癌患者の腫瘍側と健側耳下腺から流出する外頸静脈内の血液中に存在するマイクロRNA (miRNA) および代謝産物の情報を取得し、両側耳下腺付近の血液内の検出量を比較検討することで、耳下腺腫瘍に特異的な新規バイオマーカーを探索し、さらに再発・転移に関わる予測因子や新たな治療法の開発につながるターゲットの同定を目的とした。また血液中のmiRNAと腫瘍組織内のmiRNA発現についても合わせて検討することとした。 健側耳下腺および悪性腫瘍が占拠する耳下腺から血液と組織を採取し約2500種類の既知のmiRNAを網羅的に解析した。その結果、悪性腫瘍が占拠する耳下腺由来の血液と正常耳下腺由来の血液でプロファイルの異なる3種類のmiRNA (未発表のためmiR-12xx, miR-67yy, miR-68zz とする)を同定した。正常耳下腺経由の血液中よりも悪性腫瘍占拠側の耳下腺由来の血液中にこの3 種のmiRNA は多く遊離しており、一方で悪性腫瘍組織中には正常耳下腺組織と比較してこれらのmiRNAは低く発現していることがわかった。本研究では、登録症例が少なく、これらのmiRNA のプロファイルを作成することが困難であったが、今後、症例を蓄積していくことでバイオマーカーや標的遺伝子としての有用性について研究を継続する。
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