研究課題/領域番号 |
20K18317
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
宮本 佑美 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (60747690)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / PPSV23 / 高齢者 / 経鼻ワクチン / ホスホリルコリン / プライム / ブースト / 異種ワクチン接種法 |
研究実績の概要 |
Heterologous prime-boost strategy(プライム-ブースト異種ワクチン接種法)とは、ワクチンの投与方法や、抗原のベクターをプライミングとブーストで変更する事で、同じ投与方法や同じ抗原で免疫する場合よりも効率的に免疫誘導できるという理論である。現在、高齢者の細菌感染症予防の一つである肺炎球菌ワクチン(PPSV23)は、複数回接種が必要である。 本研究は、マウスを用いた基礎実験で、高齢者の肺炎球菌ワクチン接種にこの理論を応用して、全身免疫の後に経鼻免疫を追加するという新たな接種方法を開発することを目的とする。現行のPPSV23の全身免疫後に、ホスホリルコリンあるいはPPSV23の経鼻免疫を追加することで、広域の肺炎球菌に対する上気道の防御効果が上昇するか否かについて検証するために、初年度はマウスにおける同経路での免疫増強効果を確認した。マウスにPPSV23を複数回腹腔投与し、血液中の複数のPPS特異的IgG(PPS3、PPS19、PPS23特異的IgGなど)が誘導される事が確認できた。また、複数回の腹腔投与のみでは唾液及び鼻洗浄液中のPPS特異的IgA(分泌型IgA)は誘導されない事が確認できた。今後、経鼻追加免疫と免疫応答との比較と、経鼻免疫群でより多くの莢膜タイプの肺炎球菌に対する感染防御能が獲得できるかを検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスにPPSV23を複数回腹腔投与することで、血液中の複数のPPS特異的IgG(PPS3、PPS19、PPS23特異的IgG等)が誘導される事が確認できた。また、複数回の腹腔投与のみでは唾液及び鼻洗浄液中のPPS特異的IgA(分泌型IgA)は誘導されない事が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
PPSV23を腹腔投与して全身のPPS特異的IgGを誘導した後、ホスホリルコリン及びPPSV23を経鼻投与することで、鼻洗浄液及び唾液中のホスホリルコリン及びPPS特異的な免疫応答を観察する。さらに経鼻免疫時にアジュバントとしてCpG-ODN、pFLを用いることでホスホリルコリン及びPPSに対する免疫応答に有利な点があるかを観察する。 経鼻免疫にて良好な免疫応答が確認できた後に、肺炎球菌の感染実験を行い中耳、鼻腔、肺、肺血症の感染予防効果を測定する。 最終的に、heterologous prime boost strategyに基づき、腹腔投与のみで追加免疫した群と、腹腔投与後に経鼻免疫で追加免疫した群(粘膜面に抗原をブーストした群)とで免疫応答を比較し、分泌型IgAの持つ交差反応性により、より多くの莢膜タイプの肺炎球菌に対する感染防御能が獲得できるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に腹腔経路での免疫応答まで評価を行う予定であったが、次年度へ持ち越しとなった。そのため、次年度使用額が生じた。 次年度は、マウスへの初回免疫と追加免疫を別経路で行うことで、免疫応答に有利な点があるかを検証する必要がある。研究費用は、実験動物(マウス)、実験に使用する試薬(HRP標識抗体等)、消耗品(ELISAプレート等)の購入に用いる予定である。
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