HPV関連頭頸部癌に関する我々の過去のin vitro研究では、細胞増殖シグナルの一つであるPI3K/Akt/mTOR経路に関連して、mTOR阻害剤の効果がHPV非関連癌より関連癌で有意に高く、かつmTORの腫瘍促進効果において重要なmTORC1の構成因子としてしられているRaptorの発現が亢進していることを同定した。これを踏まえ、我々はmTORおよびRaptorを標的として関連した細胞内シグナル伝達経路の解析を行い、特異的なシグナル伝達系の解析および将来的に新規の分子標的治療の開発を目的として研究を計画した。 研究方法の計画・進捗:HPV関連頭頸部癌におけるmTOR/Raptorに関連した細胞内シグナル伝達系の解析として、先行研究からRaptorが高発現しているHPV16感染頭頸部癌細胞UMSCC047株とRaptor低発現の頭頸部癌細胞SAS株にmTOR阻害剤(テムシロリムス)およびRaptorに対するsiRNAを用いノックダウンを行い、mTORの下流シグナルの解析をWestern blottingアッセイにて解析し、併せて細胞増殖やアポトーシスに関する解析を計画した。阻害剤を用いた実験については、mTORアナログ製剤であるテムシロリムスのみでは高容量になるとnegative feedbackによりAkt経路などの細胞増殖経路を活性化することが懸念されるため、別の作用機序を持つmTOR阻害剤(PLD阻害剤)による効果をWST-1や細胞周期・アポトーシス解析実験にて検討する予定とた。WST-1試験ではHPV関連株では非関連株と比較し、上述のmTOR阻害剤の併用により相乗的な増殖抑制効果が確認された。免疫不全マウスへUMSCC047の皮下腫瘍移植モデルを用い、エベロリムス、Torin2使用下によるプラセボ比較での腫瘍抑制効果について現在実験・解析中である。
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