近年内耳にも組織マクロファージを中心とした免疫応答機構があることがあきらかになり、聴覚や平衡障害の治療のターゲットとなる可能性が示唆されている。組織マクロファージのサブセットは様々な組織において研究されているが、内耳においてはその起源や維持機構。免疫応答に対するサブセットの変化などは、まだ不明な点が多く残されている。そこで申請者は、多重免疫染色とデジタル画像解析技術を組み合わせた、Multiplex IHC/Image cytometryの手法を内耳に応用し、免疫細胞の組織上での分布と細胞同士の位置関係を調べ、内耳組織マクロファージの生理的な機能を明らかにすることで、それによる難聴発症機構の解明とその治療薬開発の基盤を形成することを目的として実験を行った。 初年度はまず、マクロファージ表面マーカーに用いる抗体の選別(抗体パネルの作製)と、多重免疫染色を内耳に応用するためのプロトコールの確立を行った。古典的なM1/M2マーカーに加え、マイクログリアやβ-3tublinなどの神経線維を同時に可視化することが可能となった。次にこの手法を用いて、シスプラチン投与前後でのマクロファージの挙動を経時的にとらえることを行い、従来言われていたマクロファージの数だけでなく、サブセットにも変化が起こることを見出した。
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