研究実績の概要 |
我々は事前研究でアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法(SLIT)において治療抗原が最初に反応する唾液に着目し、唾液のIL-10産生誘導活性が治療の有効性に関わること(Haruna T, Oka A, Okano M, et al. Allerology International 68: 82-89, 2019)を明らかにした。本研究の目的は、舌下免疫療法の効果と唾液マイクロバイオームとの関連を解析し、“唾液に含まれる免疫制御活性をもつ特定の細菌種が舌下免疫療法の効果に関与する”という仮説を検証することである。 まずは日本人のスギ花粉症患者104人の唾液を採取、THP-1細胞に添加して培養し、制御性サイトカインであるIL-10産生量とマイクロバイオームの組成率を検討した。その結果、IL-10産生量が高い患者、治療効果が高い患者で、唾液中のプレボテラ属の組成率が高いことが判明した(Oka A, Okano M, et al. Allergy 76: 2617-2620, 2021)。 次にプレボテラ属の中でも組成率が高く、上記の結果でIL-10産生量とも相関のあったP.melaninogenica種をTHP-1細胞に添加したところ、濃度依存的なIL-10産生誘導が確認できた。IL-10産生誘導活性を持つ成分としてプレボテラ属の細胞壁の成分であるLPSが候補として考えられる。活性成分を特定するためLPSを阻害するポリミキシンB(PMB)やLPSが結合するTLR4阻害薬、リポタンパク質を阻害するTLR2阻害薬を添加したところ、いずれもIL-10産生亢進が見られた。プレボテラ属細菌刺激にPMB添加することで脾細胞の分裂促進が見られた報告があり、IL-10産生亢進の原因としてIL-10産生細胞の増加があるかを追加実験で調べる予定である。
|