研究実績の概要 |
鼻副鼻腔粘膜上皮細胞を培養し、S100A7を培養系に非添加または添加して、TERについてin vitroにてバリア機能の評価を、リアルタイムPCRおよびウエスタンブロット法によってフィラグリンの増加と併せて確認した。また、鼻副鼻腔粘膜上皮細胞のバリア機能のin vivoでの評価として上皮電気抵抗値(TER;trans epithelial electrical resistance)をTissue Conductance Meter AS-TC100 (ASCH JAPAN Co.)を用いて、アレルギー性鼻炎症例の測定を行い、抗原刺激時の上皮電気抵抗低減およびアレルギー性鼻炎治療介入時の上皮電気抵抗増強を明らかにした。一方、好酸球性副鼻腔炎症例においては鼻粘膜部位別の上皮電気抵抗について評価に着手した。 さらに、マウスモデルでのTissue Conductance Meter AS-TC100によるバリア機能評価の確立のため、表皮バリア機能をAryl hydrocarbon receptor(AhR)変異マウスを用いて計測し、野生型マウスと比べ有意に低減していることを明らかにした。バリア機能関連タンパクの増強因子の探索としては、KeratinocyteについてTight junction関連タンパクであるclaudin-4, claudin-7, occludin, and zonula occludens (ZO)-1の発現の増強を評価したところ、新たにCalcitriol刺激がこれらの亢進に関与することを確認した。 これらの結果から、これまで評価困難だったin vivoでの上皮バリア機能の定量的計測について低侵襲かつ簡便に行えることが示唆された。また今後、S100A7やCalcitriolをはじめとするバリア機能増強に関与するタンパクの探索およびその評価を鼻副鼻腔粘膜上皮細胞に応用することで、アレルギー性鼻炎などの鼻副鼻腔疾患に対する新規機序による治療開発の可能性が導き出された。
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