本研究背景として、大腸がんや膵臓がんでは、口腔内常在菌のフソバクテリウムや細菌叢(細菌の集合体)が腫瘍組織の内部に存在し、腫瘍免疫を抑制してがんの進展に関与することが明らかになった。この様な腫瘍内細菌叢が現在、免疫チェックポイント阻害剤へのバイオマーカーとしても注目されている。頭頚部がんは、口腔内細菌叢に最も曝露されることから、唾液を用いた口腔内細菌叢の研究がされてきた。しかし腫瘍内細菌叢と抗腫瘍免疫の関わりは未だ明らかにされてはおらず、解明が必要とされている。そのため今回は、①フソバクテリウム等の歯周病の原因でもある口腔内細菌叢は、大腸がんや膵臓がんのように頭頚部がんでも腫瘍内細菌叢としてとして働いているのではないか。②上記の腫瘍内細菌叢は、頭頚部がんの腫瘍免疫を抑制し、がんの進行に関連しているのではないか、という点を明らかにするために本研究を計画した。本研究を施行するための研究計画書の倫理審査委員会の通過が遅れており、検体の採取・および本研究の実施が大幅に遅れている。現時点では頭頚部がんの転移再発頭頚部がんの薬物療法に対する臨床データの収集を行い、論文化を行った(IJCO online)。さらに初回治療の頭頚部がんに関しても、がんの形成される段階での環境要因の違いが、薬物療法への反応性を変化させることをまとめ、論文投稿を行っている。
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