研究課題/領域番号 |
20K18342
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浅尾 和伸 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (80866533)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロバイオーム / 細菌叢 / 真菌叢 / 眼内炎 |
研究実績の概要 |
これまで、多数の眼疾患を対象として結膜擦過にてサンプル採取を行ってきた。同サンプルより抽出したゲノムから、次世代シーケンサーを用いることで、結膜に存在するマイクロバイオームの同定解析を進めている。解析により結膜環境の恒常化、安定化に働くマイクロバイオームの同定、炎症起点となる因子を検討するための研究を継続中である。 継続してきたサンプル採取は、眼表面結膜部位だけでなく、手術中において前房水や硝子体のサンプルを多数採取することが出来た。硝子体疾患では特発性黄斑上膜、黄斑円孔、網膜剥離、硝子体出血、悪性リンパ腫など疾患で採取を行うことができた。それに加え、眼感染症では、眼科における緊急疾患である眼内炎の多数のサンプル採取を行うことができた。 これまで硝子体疾患における細菌叢、真菌叢の報告は多くなく、特に感染性眼内炎に関しても詳細な報告がなされていない。我々は現時点で同定できた細菌叢、真菌叢の比較解析を行い、感染の起因となる菌叢同定や、治療に向けた菌叢の特性解析を行っている。 眼感染症治療にもマイクロバイオームの解析を応用することで、臨床に還元できるよう解析を行っている。メタゲノム解析を行うことで、感染原因および伝播する感染経路の検討を進めている。 現在得られたデータを用いてメタゲノム解析を行うことで、正常菌叢の安定化に働く菌叢の同定や適切な抗生剤の選択など、臨床データとのリンクできるよう臨床データについても集約中である。現在、得られたデータ解析に加え、更なる解析に向けて症例数を増やすため、引き続き継続してサンプル採取も継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外来並びに手術において、研究対象となる臨床サンプルの採取を行い、次世代シーケンサーを用いて各種疾患における細菌、真菌叢の同定を継続して行っている。サンプル採取では、比較のため各患者から、結膜、前房水、硝子体の3部位よりサンプル回収を行っている。疾患として黄斑円孔15例、黄斑前膜15例、悪性リンパ腫10例、眼内炎10症例をはじめとし、多疾患よりサンプル回収を行うことができた。 上記サンプルよりDNA抽出後、次世代シーケンサーを用いて細菌叢、真菌叢の同定並びに特性解析、データの集約を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シーケンサーを用いて得られた結膜、前房水、硝子体における細菌叢、真菌叢のデータの集約、解析を行っていく。特に、眼科における緊急疾患である眼内炎の起炎菌の同定は、視力を維持するための治療方針の検討に役立つため、継続してサンプル回収、菌叢の同定を継続する予定である。 感染起因となるバイオームデータと比較するため、健常の細菌叢の同定も引き続き行っていく。各疾患では結膜、前房、硝子体と異なる部位の菌叢を比較することが可能であり、菌叢の侵入経路や新規治療法の検討、安定化につながる因子の同定も検討する。 得られたデータを用い、成果報告のため論文化、学会発表にて報告も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
得られた臨床サンプルからDNAを抽出する際に必要な物品が、コロナのため納入が困難となり、それに充てる費用分担がなくなったため。また、本研究に必要な情報を集めるための学会が開催されず、その旅費の費用負担が減額したため
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