本研究では、網膜神経細胞保護における熱ショック転写因子1(HSF1)の分子機序を明らかにし、最終的には種々の原因による網膜変性疾患の抑制ならびに網膜神 経保護作用を有する新たな治療薬の開発を目指す。研究実施計画は以下の4つに分けられる。(1)光誘因性網膜変性モデルにおけるHSF1と関連する分子の同定 (2)光誘因性網膜変性モデルにおけるHSF1の神経保護作用の検討(3)網膜神経細胞の培養細胞におけるHSF1関連分子の機能解析(4)網膜神経細胞の培養細胞における神経保護作用の検討である。 (1)、(2)については令和2年度に報告した通りである。(3)について、CRISPER/Cas9 systemによるHSF1ノックアウト網膜神経細胞株(661w HSF1-/-)に様々な照射条件を検討した結果、光量1500lux、24時間で光刺激により、661w HSF1-/-に生じたアポトーシスは野生型661Wのものに比較して細胞数あたりのアポトーシスの発生率の減少を確認した。一方で、光刺激を受けた661w HSF1-/-は接着性能が落ちることを確認した。すなわち、CRISPER/Cas9 systemにより樹立した661w HSF1-/-を用いた実験においては、細胞成分のサンプル回収が難しいことが分かった。そのため、(4)については未実施である。 ここまでの実施した研究成果からはHSF1が光誘因性網膜変性モデルにおいてmRNAおよびタンパク質で調べた結果から、光刺激に対して神経保護性の作用を有していることが分かった。
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