研究課題/領域番号 |
20K18357
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
ジョン ホヌク 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (90868613)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 近視 / 強膜 / 眼軸長 / 脈絡膜厚 / 眼圧 |
研究実績の概要 |
本研究の結果から近視による眼の物理的変化を理解し、さらに近視進行を予防するための指標として応用するため、近視進歩における強膜の生体物理的特性の関係を明らかにすることを目的とする。そのため、レンズ誘導近視マウスモデルを用いて近視誘導の進捗における角膜屈折度、眼軸長、脈絡膜の厚さ、眼圧、体重を評価し、それぞれの関係性を検証した。 眼圧と眼軸長の関係性を検証するため、3週齢のマウス(6匹、12眼)の眼圧と眼軸長を6週齢まで測定した。4週齢のマウスの眼圧 は眼軸長の変化量(3週齢の時点と比較) とは相関関係がなかったが、6週齢では、眼圧は眼軸長の変化量(3週齢の時点と比較)と相関関係があることを示した(相関係数R=0.56)。 そして3週齢のマウス(22匹)を3週間近視誘導を行い、0と3週目の時点で近視誘導をしていない眼では3.19±6.42D、近視誘導をした眼では-15.45±5.33Dでレンズによる近視が確実に誘導されたことを確認した。 近視誘導をしていない場合、体重の変化量と眼軸長の変化量で相関関係がなかったが(R=0.15)、3週間の近視誘導では相関関係がある(R=0.59)ことを示した。また、近視誘導をしていない場合、眼軸長と脈絡膜の厚さの変化量と弱い相関(R=0.42)を示したが、3週間の近視誘導では相関がない(R=0.15)ことを示した。これらの結果から成長と伴い、近視進行の眼球も成長すると考えられる。 眼圧や眼軸長、脈絡膜は強膜の物性と直接関係があることから近視進捗により強膜の物性にも相関関係があることを示唆した結果となった。今後の研究計画としては、レンズによる近視誘導マウスモデルを用いた近視進捗における眼圧、眼軸長、脈絡膜の厚さの変化の関係性を検証した結果を踏まえ、強膜の物理的特性の評価を行い、近視進捗と伴う様々な特性の関係性を近視進歩の指標を提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度本研究の進捗状況としては、レンズ誘導近視マウスモデルを用いて近視誘導の進捗における角膜屈折度、眼軸長、脈絡膜の厚さ、眼圧、体重を評価し、それぞれの関係性を検証した。マイナス度数のレンズによる近視誘導で、角膜屈折度は負数となり、マウスの眼は近視になったことを確認し、眼軸張は長く、脈絡膜の厚さは薄くなった。眼軸長の伸張は体重と相関関係を示し、脈絡膜の厚さとは弱い相関関係があることを示した。また、眼圧は眼軸長の伸張との相関関係があることを示した。脈絡膜や眼圧は強膜の物性と直接関係があることから近視進捗により強膜の物性にも相関関係があることを示唆した結果となった。現在までの結果からこれからの研究計画である強膜の物理的特性の評価を行う行うことで、近視進歩における強膜の生体物理的特性の関係性を明らかにする目的を果たすと期待できる。そのため、当初の計画通りの進捗で「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、近視進歩と伴う強膜の生体物理的特性を定量的に解析するため、レンズ近視誘導マウスモデルを用いて眼球の強度、強膜の剛性やコラーゲン合有量の測定を行う。今まで検証した結果とともに分析することによって近視進歩に伴う強膜の生体物理的特性の変化を関連付けることができる。 また、マウスの幼少期である3週齢から若年期まで3週間行った近視誘導の期間を中齢期(15週齢)まで行うことでより多くのデータを取って分析することで、近視発生、進行、深刻化における近視進捗の段階での変化する組織の特性を細かく評価、分析することができる。これによって、強膜の物理的特性を定量的解析による近視進歩の指標を提案することが期待できる。
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