研究課題/領域番号 |
20K18357
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
ジョン ホヌク 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (90868613)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 近視 / 強膜 / 脈絡膜 / 菲薄化 |
研究実績の概要 |
本研究では、近視による眼の物理的変化を理解し、さらに近視進行を予防するための指標として応用するため、近視進行における強膜を含む眼組織の生体物理的特性の評価をレンズ誘導近視マウスモデルを用いて行った。 近視進行に伴い、脈絡膜と強膜の厚さが減少していくことを明らかにした。近視誘導眼と誘導していない眼における強膜の厚さをH&E組織染色で比較した結果、視神経乳頭部に近いほど、近視の程度に影響していた(近視誘導していない眼:23.72±3.75μm、近視誘導眼: 14.81±1.99μm、p<0.01)。また、光干渉断層計による脈絡膜の厚さを測定した結果、近視を誘導すると菲薄化を生じた。血管豊富な組織である脈絡膜の菲薄化による血流の低下は強膜への酸素、栄養供給が円滑に行うことができないため、強膜のリモデリングに影響し、厚さの減少にもつながった可能性を示している。 一方、近視進行において眼の外側組織の厚さ変化にも関わらず、マウスを用いた近視誘導モデルでは眼圧の変化と近視進行との相関関係がみられなかった。しかし、眼圧を下げる効果をもつ緑内障点眼薬を近視誘導マウスに点眼、腹内注射を行った結果、近視進行が抑制された結果を得られた。また、近視進行と相関関係を示した脈絡膜と強膜の厚さは維持され、近視の評価指標として応用できることを確認した。 引き続き、強膜を含む眼組織の生体物理的特性を用いた近視進行の定量的評価指標を探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、近視進行に伴い、脈絡膜と強膜の厚さが減少していくことを明らかにした。しかし、強膜の厚さ評価において、試料となるマウスの眼を摘出した後、組織染色を行い、厚さを測定したため、非侵襲的測定法を用いることができなかった。網膜色素上皮と脈絡膜に存在する密度高い色素細胞によって散乱が生じたため、非侵襲的測定法を用いた強膜の強度評価を行えず、既存の計画よりやや遅れているといえる。しかし、BALB/Cなどのアルビノマウスを用いて近視誘導マウスを作製することでこちらの問題を解決できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続き近視誘導マウスモデルを用いて強膜を含め眼組織の生体物理的特性を定量的に評価し、近視進行における相関関係を解明する。また、強膜のリモデリングによって眼軸長が伸長することで、近視が進行していく過程で重要である脈絡膜の菲薄化による血流の低下を光干渉断層血管撮影検査(OCT-angiography)を用いて定量的に評価する。さらに、今までC57BL/6マウスでは光干渉断層計によって観察・評価できなった強膜をアルビノマウスを用いて非侵襲的に測定を行うことができる。新たな近視誘導条件を設定し、アルビノマウスを用いたモデルを作製する予定である。 これらの推進方策を基に、近視の進行と強膜、眼組織の変化の関係を明確に示すことを目指す。
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