研究課題
近視の有病率の急増につれ、近視の発症に関わる要因や近視進行抑制に対する関心が高まる中、網膜の後方に位置する脈絡膜が薄くなること、すなわち菲薄化が近視発症原因の一つと考えられている。本研究では、網膜色素上皮由来のVEGFを欠損させることで脈絡膜が菲薄化され、眼軸長伸長と屈折度の近視化が引き起こされることを報告した(Zhang, Jeong et al. PNAS Nexus. 2022)。本研究成果により、いまだ解明できていない近視進行メカニズムの一端が明らかとなり、脈絡膜の構造維持に関わるVEGFの適切な制御が、新たな軸性近視の進行抑制療法の開発につながることが示唆された。バイオレットライト透過率が眼軸長および脈絡膜厚の変化を伴う近視の進行に影響を与えることを明らかにした。また、バイオレットライト透過率が低下するとバイオレットライトの近視抑制効果が低下することから、バイオレットライトの透過率が近視抑制メカニズムに影響を与えることが示唆され、バイオレットライト透過率の有効最小値を示すこともできた。3週間における単眼近視誘導後回復誘導1週間後、近視誘導した眼は屈折度の増加による正視化、眼軸長伸長の停滞、脈絡膜菲薄化からの回復が認められた。しかし、近視誘導していない眼においては、逆に、屈折度は減少し、眼軸長は近視誘導した眼の同等に伸長した。さらに、脈絡膜厚は減少傾向を示した。これらの結果により、脈絡膜の制御は中枢神経系を介した両眼の視覚信号フィードバック経路により支配されていることが示唆された。緑内障の点眼薬には近視進行抑制に効果的であるものがあることに着目し、既存の緑内障点眼薬から近視進行抑制効果を見つける試みを行い、ブナゾシンのみ抑制効果を示した。ブナゾシン点眼群では濃度依存的に近視進行が抑制された。これにより、近視進行、抑制過程において脈絡膜厚の変化量により評価できることを示唆した。
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