申請者は、ミトコンドリアからO2・-を過剰発生させるTet-mev-1マウスをもちいて、内的酸化ストレスに伴い角膜内皮細胞の減少が加速することを以前に報告した。 今回の若手研究による助成を得て、マウス角膜内皮細胞の初代培養系を独自技術で確立し、in vitro解析を中心に内的酸化ストレスに伴う角膜内皮細胞減少の分子機構解明に尽力した。 結果1:内的酸化ストレスを負荷したTet-mev-1マウスの角膜内皮細胞は、通常マウスの角膜内皮細胞に比べて早期に細胞内脂肪滴を蓄積し、その後培養を長期継続すると細胞外に脂質顆粒を放出することを確認した。このことから、細胞内で処理しきれない過酸化状態の脂質成分が老廃物となってエキソサイトーシスなどによって細胞外に放出された、あるいは細胞死を起こした生体膜脂質顆粒が細胞外老廃物となっていると示唆された。 結果2:細胞内脂肪滴を多く蓄積した若齢のTet-mev-1マウスの角膜内皮細胞では、LC3-IIが増加し、通常マウスの細胞と比べてオートファジーが亢進していることを明らかにした。また、老齢になると通常マウスの細胞においても、脂肪滴が蓄積し、内的酸化ストレスを負荷したTet-mev-1マウスと同等にまでオートファジーが誘導されていることを確認した。一方、若齢から既にオートファジーを誘導していた老齢のTet-mev-1マウスの角膜内皮細胞は膨潤化し、多くのオートファゴソームを蓄積し、内部は空砲化していた。このことから、内的酸化ストレスにより蓄積する脂肪滴をオートファジーによって除去することで、細胞損傷・細胞死を回避し、角膜内皮細胞の減少を抑止していることが示唆された。また、リソソームの絶対数がピークに達し、オートリソソーム形成が不十分となると、増大する脂肪滴に含まれる脂質過酸化物などによって、フェロトーシス細胞死が角膜内皮細胞を減少させていると示唆された
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