研究課題/領域番号 |
20K18365
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
野呂 隆彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 研究員 (00349606)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 正常眼圧緑内障 / コモン・マーモセット / 視神経再生 / 視神経挫滅モデル / 網膜神経節細胞 / 転写活性因子 |
研究実績の概要 |
緑内障はわが国で最大の失明原因であるが、障害された視機能を回復させることができないため、根本的な治療法の開発が期待されている。本研究では、小型霊長類のコモン・マーモセット(以下マーモセット)を活用して、転写活性因子を過剰発現させることにより、視神経再生と視機能の回復を試み、緑内障に対する将来的な新規治療法の開発を目指している。 本年度は主に、マーモセットにおける視神経再生のモデル動物の確立を行った。マウスでは、視神経再生の効果判定に視神経挫滅モデルが一般的に用いられているが(Noro et al. Cell Death Dis. 2015)、霊長類でのモデルは確立されていなかった。そこで、我々は視神経に直接的にアプローチする方法を解剖学的に検討し、ヒトにおいて眼窩の深部腫瘍の摘出術に用いられているKronlein法を改変したマーモセット視神経挫滅法を見出し確立した。眼窩深部へのアプローチは、側方、経頭蓋、経副鼻腔の3つに分かれるが、マーモセットでは頭蓋骨、眼窩周囲の骨(前頭骨、前頭頬骨縫合部下部骨)が厚く、また、側頭筋の筋走行がヒトと異なるため、術式の改良が必要であった。我々は側方からのアプローチを用いて、Stallard-Wright法の皮膚切開に加え、適切な骨切り範囲を確定した。直視下に視神経を確認し、挫滅はマウスで用いられている鑷子による物理的な挫滅刺激を採用した。この結果、術後約2週間で著明な網膜神経節細胞(以下RGC)の細胞死を誘導することに成功し、今後の転写活性因子を用いた再生治療を評価する研究土台が整った。また、RGCのサブタイプの中で、αRGCの減少率を網膜の免疫染色法を用いて評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マーモセットの視神経挫滅モデルの構築が完了し、次の研究ステップへ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、視神経の再生を評価する方法の確立が必要である。現在、コレラトキシンBによる評価を行っているが、薬剤自体生の網膜毒性を含めて、適切な投与量の検討が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の節約が出来た為、物品費の支出が予定より少なかった。次年度の試薬等に使用する予定である。また、コロナウイルスの流行により、研究自体を行うことや、国際学会などの大きな学会発表を行うことが困難であったため次年度で行う予定である。緊急事態宣言の発令や得られたデータの状況に応じて、研究や海外学会の発表を進めていく。
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