研究課題
緑内障はわが国で最大の失明原因であるが、障害された視機能を回復させることができない。病態解明と治療法の開発にはモデル動物を用いた研究が必要不可欠であるが、これまでは緑内障の発症組織とされる篩状板が存在しないマウスを中心に研究が進められており、ヒト病態との相違に問題があった。本研究では篩状板を有する小型霊長類のマーモセットに注目し、実験動物としての使用を開始した。マーモセットを活用し視神経挫滅障害からの視神経再生と視機能の回復が可能かを検討し、将来的な新規治療法の開発を目指す。これまでに4頭のマーモセットについて視神経挫滅手術(片眼)を行ってきた。このうちcontrol群の2頭では、Alexa647で蛍光標識された逆行性トレーサーであるコレラトキシン・サブユニットBを眼球投与することで、完全に軸索切断がされていることが確認されており、視神経挫滅手術が適格に施されていることが明確となった。一方、AAVによる遺伝子治療した視神経では、わずかではあるが再生したと思われる軸索を確認することができた。しかしながら、マウスでの軸索再生と比較すると繊維数が非常に少なく、長さも短かいことが明らかとなった。現時点では、マーモセット網膜でのAAV感染効率が不明となっているため、今後の実験では感染効率の確認が最も重要な課題となった。
2: おおむね順調に進展している
最も困難と思われたマーモセットの神経挫滅手術が問題なく進行したため。
今後もさらに、2頭のマーモセットを利用して視神経挫滅後の軸索再生について解析を進める。具体的には、AAVによる遺伝子治療を施した後に、視神経挫滅手術を行う。灌流固定の3日前に蛍光標識したCTBを投与して、再生軸索のみをラベルする。採取した視神経の凍結切片を作製して、蛍光顕微鏡にて再生軸索の数を定量する。
試薬などの消耗品の節約に努めたため。次年度に行う予定のマーモセット網膜免疫染色について、さらに多種のマーカー抗体を活用する。
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