ドライアイ患者と健常者には、安静時機能的MRIにおいて複数のネットワークに有意な差がみられることが明らかになった。 特に、痛み関連脳領域でもあり、痛みの抑制に対しても非常に重要な役割を司る前部帯状回と安静時の脳活動であるデフォルトモードネットワークにおいてハブとして中心的役割を果たす後部帯状回のネットワークにおいて顕著な差がみられるという結果が得られた。 ドライアイという疾患は従来は涙液が不足し、眼表面が乾燥するだけの疾患と捉えられてきたが、近年、その自覚症状には眼表面の侵害受容性疼痛のみならず、神経障害性疼痛や痛覚変調性疼痛などの要素も複雑に絡んでいる可能性が指摘され始めている。 このような背景の中、本検討結果は、ドライアイ患者において眼表面末梢における神経感受性変化のみならず、中枢神経においてもその感受性に変化が生じていることを示唆するものであり、従来の眼表面が乾くドライアイという疾患像から、中枢神経の変化までをも巻き込んだ慢性眼痛としてのドライアイ病態を明らかにするものになったと考えている。 また、ドライアイにおける他覚的所見と自覚症状が相関していない、または他覚的所見が自覚症状を十分説明できないことに対して、痛覚過敏の存在を我々は提唱していたが、本研究結果から中枢においても痛覚過敏としての変化が認められることが明らかとなり、痛覚過敏型ドライアイといえるドライアイの分類、確立に近づく結果を得ることができたと考えている。
|