研究実績の概要 |
最終年度に実施した研究としては、眼の分化初期に発現するRAXの発現中に蛍光蛋白質を発現する遺伝子組み換えiPS細胞の樹立を行い、最終的に4クローン樹立できた。その細胞を用いて、当研究室で確立した手法である、眼の発生過程を2次元で模倣できるSEAMを作製し、分化誘導中におけるRAX発現細胞の発生時期、発現部位を継時的に観察できた。その結果、未分化な状態ではコロニーの中央部分から発現が開始され、コロニー全体に広がった後、2週目あたりからはSEAMの周辺部に局在し、4週目にはSEAMの2層目にのみ局在することがわかった。SEAMの2層目は眼の発生では網膜領域に相当することから、RAX陽性細胞が眼への分化とともに2層目に限局することは既報でわかっている発生学の点からも妥当であると考えられた。また、分化誘導中、1週間ごとにRAX陽性細胞とRAX陰性細胞をFACSで単離し、眼の発生に関わる遺伝子や網膜の発生に関わる遺伝子(TUBBIII, FOXG1, PAX6, MITF, CDH1, p63, CRYAA, CRYBB2, SOX10)の発現について定量PCRによって解析を行った。その結果、多くの遺伝子について、発生学での既報と一致した遺伝子発現動態を確認できた。さらに、分化4週目において眼の発生に重要な蛋白質や網膜に発現する蛋白質、水晶体に発現する蛋白質など(p75, SOX10,tubblin3, CHOX10, MITF, p63, PAX6, α-Cristaliln)の免疫染色を行い、RAX陽性細胞との位置関係についても観察した。これらの研究を通して、SEAMモデルにおいては眼の発生過程をかなり詳細に模倣できていることが確認できた。
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