ぶどう膜炎は失明原因の上位を占める難治性疾患である。ベーチェット病、サルコイドーシス、フォークト・小柳・原田病(以下、原田病)は本邦の三大ぶどう膜炎疾患であり、いずれの疾患においても免疫系の異常が発症の要因となる。これらぶどう膜炎疾患で見られる免疫系の異常には、何らかの遺伝要因および環境要因が関与していることが示唆されているものの、ぶどう膜炎の発症のメカニズムは未だ明確に特定されていない。これまでの研究により、ベーチェット病、サルコイドーシスおよび原田病では、サイトカインおよびケモカイン産生の異常が疾患の病態に関与していることが示唆されている。 したがって本研究では、ベーチェット病、サルコイドーシスおよび原田病を対象にサイトカイン、ケモカインおよびそれらの関連因子の産生能を網羅的に調査し、各々のぶどう膜炎疾患におけるサイトカインおよびケモカインの動態を評価する。 2020年度までに、日本人のベーチェット病患者50例、サルコイドーシス患者50例、原田病患者50例および健常者50例について、サイトカイン、ケモカインおよびそれらの関連因子のアッセイを網羅的に実行している。2021年度は、新規の検体(各疾患および健常者50例ずつ)を対象として、サイトカイン・ケモカインアッセイを実行し、各ぶどう膜炎疾患の病態に関与を示すサイトカイン、ケモカインおよび関連因子を網羅的に特定した。また、特定したサイトカイン、ケモカインおよび関連因子を対象にパスウェイ解析を実行し、各ぶどう膜炎疾患の病態に関与するパスウェイ(生物学的過程・経路)を見出した。
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