研究課題/領域番号 |
20K18390
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 映美 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60794394)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 角膜 / 創傷治癒 / ルミカン / 線維芽細胞 / コラーゲンゲル |
研究実績の概要 |
創断端距離の評価からルミカン遺伝子欠失角膜では野生型マウス角膜と比較し、角膜実質の癒合治癒が遅延していることが判明し、またαSMAの発現がルミカンノックアウトマウス角膜において抑制されていた。この背景メカニズムの解明の為のin vitro研究を行った。 所属の既報(Okada Y, et al. Am J Pathol, 2011)に従ってルミカン欠損および野生型マウスの生後1日の眼球由来からoutgrowthで得た培養角膜実質細胞をTGFβ1(1 ng/ml)添加時の線維化関連遺伝子発現とαSMA発現を蛍光免疫組織化学で評価した。また、細胞収縮アッセイキットを用いて野生型マウスとルミカンノックアウトにおけるゲルの収縮率を比較検討することを通して創傷治癒とルミカンの関係性についてさらなる検討を加えた。 免疫組織学的検索において、WT細胞、KO細胞ともにTGFβ1添加後1時間にαSMAの発現が増強したが、いずれの時間帯でもKO細胞で抑制されていた。フィブロネクチン、コラーゲン1a1ではKO細胞とWT細胞で差を認めなかった。KO細胞ではpSmad3の核内移行が抑制されていた。コラーゲンゲルを用いた収縮性の評価では、TGF-β1非添加群では、WT,KOともにゲルは収縮するもののその収縮速度は緩やかで、96時間経過後ではWT、KO両群とも測定開始時点の面積の80%程度までしか収縮しなかった。一方、TGF-β1添加群ではWT,KOともに重合から12~24時間でゲルの収縮が進んだ。WTとKOゲルはどの時間帯でもWTゲルの方が強く収縮しており、測定開始から24時間以降では、ゲルの収縮はKOにおいて有意に抑制されていたlumicanは間葉系細胞でのTGFβ1経路を介してαSMAやコラーゲン発現に関与しており、KOマウスの角膜実質創傷治癒の遅延の機序にこれが含まれる可能性があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ルミカンノックアウトマウスは1回あたりの出産で生まれる仔の数が少なく、必要な数のマウスを確保するのが困難であるため。
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今後の研究の推進方策 |
ルミカンのシグナル伝達についての検討のため、in vitroでの研究を続行する。所属の既報(Okada Y, et al. Am J Pathol, 2011)に従ってルミカン欠損および野生型マウスの生後1日の眼球由来からoutgrowthで得た培養角膜実質細胞を用いる。60mmシャーレでコンフルエントになるまで培養後にTGFβ1添加をし、経時的にシグナル伝達(Smad2/3, p38, Erk, JNK, Erk)のリン酸化をWestern blot法で検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスやコラーゲンキット等の購入数が予定より少なかったため次年度使用額が生じた。今後の使用計画として、新規の試薬やマウスの購入に使用する予定である。
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