角膜全層切開モデルにおいて創作成5日後と10日後で創間距離を測定した。創は間質の最深部で測定した。創作成5日後のノックアウトマウス角膜では有意に創間距離が長かった。10 日目では創間距離に有意差は無かったが、創傷に形成された肉芽組織は、野生型マウスと比較してノックアウトマウスの方が大きいように見えた。これにより、ルミカンノックアウトマウスにおいて創傷治癒が遅延することを確認した。 また、免疫組織学的検討により、ノックアウトマウス角膜では筋線維芽細胞の発現が抑制されていることがわかった。フィブロネクチンの発現については差がなかった。 角膜より得たmRNAよりリアルタイムRT-PCRを施行したところ、αSMAの発現がノックアウトマウスにおいて低下していた。 これらの結果をもとに、ルミカンは筋線維芽細胞の発現と関係して創傷治癒遅延に関わっていることを想定した。その機序解明を目的として、in vitroでの研究を行った。 マウスの眼球を培養して得た眼線維芽細胞についてreal time RT-PCRを行った。外因性TGFβ1への曝露により野生型マウスの培養線維芽細胞ではαSMAおよびコラーゲン 1a1の mRNA 発現がアップレギュレートされたが、ルミカンの損失によってそれらが打ち消された。また、蛍光免疫染色を行ったところ、Smad染色で野生型マウスとノックアウトマウスで染色差を認めた。 これにより、ルミカンのシグナル伝達はSmad経路と関係していることが考えられた。
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