研究課題/領域番号 |
20K18391
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
平塚 諒 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50837440)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドライアイ / 涙液層破壊時間 / 造血幹細胞移植 / 慢性眼GVHD |
研究実績の概要 |
2013年に提案された国際眼GVHD診断基準(Ogawa Y, et al. Sci Rep, 2013)について日本ドライアイ診断基準2016、NIH作成眼GVHD診断基準2014との比較検討を行い、感度、特異度、正確度の検証を行う。検討項目としては、自覚症状、角膜染色スコア、シルマー値、結膜充血の4項目を抽出し、国際眼GVHD診断基準に検討項目として抜けている涙液層破壊時間との比較検討を行った。予備的にすでに、2014年から2018年までに当院ドライアイ外来を受診した造血幹細胞移植症例48例、48眼を検証し、国際診断基準スコアと日本の診断基準の主要項目である涙液層破壊時間(BUT)との相関を検討した結果、両者には有意な逆相関を認め、(p<0.001,R=0.746)国際診断基準と本邦診断基準双方に相関があることが示唆された。 臨床検体での検討は、採血、インプレッションサイトロジー、ブラッシュサイトロジー検体をもちいたGVHDによるドライアイの診断に有用なIL-18を含めたインフラマゾーム関連分子について眼GVHDのバイオマーカーの検索を行っている。 この結果を検討するために、研究者間でZoom による会議を定期的に行いデータ解析を行い討論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性眼GVHDによるドライアイの国際診断基準の妥当性の検討を記した論文を現在執筆中であり2021年6月までに投稿、掲載を目指している。 論文執筆完成後は慢性眼GVHDによるドライアイの国内外の多施設実態調査 眼GVHDの他の眼合併症、全身合併症との関連、眼GVHDの発症リスクファクターの検討 全身GVHDとの関連 眼GVHDのみの症例の検討、GVHDの発症臓器の発症の経時的順位の検討等上記項目について多施設調査を行うことで診断・治療に関するエビデンスを構築し慢性眼GVHDによるドライアイの重症度分類作成とNIH国際眼GVHDスコアとの比較検討を行うことを本学の症例についてさらに評価が終了した国際診断基準スコアを用いて臨床像と照らし合わせ、重症度分類を検討することを予定している。臨床検体での検討では臨床サンプルの血清、結膜上皮ブラッシュサイトロジー検体におけるIL-18の蛋白および遺伝子発現上昇と臨床重症度との相関を調べる。 基礎研究:IL-18の上昇に伴い、インフラマゾーム分子であるNLRP3, カスパーゼ1等の上昇の有無を確立されたGVHDマウスモデルの移植後4週時における涙腺と血清を用いてコントロールと比較して検討する。
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今後の研究の推進方策 |
1)眼GVHDによるドライアイの診療ガイドライン作成 現時点で眼GVHDによる統一された 診療ガイドラインは国内外にないため、国内、国内の GVHD研究者と連絡を取り合いガイドライン作成委員会、MINDSにのっとった診療ガイドラインの作成を開始する。診療上のクリニカルクエスチョンを抽出することを目指す。 2)眼GVHDによるドライアイのガイドラインの効果を検証、慢性期後遺症克服のための治療法を確立することを目指す。 基礎研究:近年、慢性炎症性疾患に有効性が報告されている抗IL-18抗体について2つの種類のIL-18 中和抗体による治療戦略を検討する。すなわち、ウサギポリクローナル 抗マウス IL18 IgG 抗体とリコンビナント ヒト IL-18結合蛋白 (rhIL-18BP)の2種類についてマウスモデルを用いてIL-18 の制御によるGVHDによるドライアイの抑制の有無を検討する。指標として下痢、体重、皮膚の湿疹などの表現型、涙液量、眼表面フルオレセインスコア、BUT, 組織、血清における線維化と炎症反応の抑制を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で基礎研究の推進が計画どおりにできなかったことが次年度使用が生じた理由である。 使用計画は今年度新型コロナ感染症が収束後に2020年度に遂行できなかった部分の臨床および基礎研究にすぐに着手遂行できるように計画書に従い2021年度は統計関連ソフト、実験試薬を準備する予定である。
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