ドライアイ症候群(ドライアイ)とは涙液の減少および、成分変化によって惹起される前眼部疾患である。ドライアイは慢性化する強い眼不定愁訴を主訴とし、労働生産性の低下を招くことが知られている。近年、ドライアイにおける慢性の不定愁訴が、神経因性疼痛に起因することが表出してきた。しかし、その機序解明に必須のツールである、前眼部-神経因性疼痛モデル動物は存在せず、病態解明が進んでいないのが現状である。 本研究の目的は、マウスを用い、ドライアイ等の前眼部疾患における、前眼部の不定愁訴(疼痛)にかかわる神経/脳領域を薬理/光遺伝学的手法により恣意的に操作し、前眼部‐神経因性疼痛を惹起可能なモデル系を確立し、その発症機序の解明へと導く。 本年度は、昨年度に引き続き、前眼部疼痛に関わる脳/神経領域の、薬理/光遺伝学的手法による恣意的操作法を確立することを目的とした。角膜知覚に関わる三叉神経脊髄路核のニューロンを恣意的に薬理遺伝学的手法で発火させることにより、眼痛行動および涙液分泌量の増加がみられ、これまで推測されているのみであった脳領域の機能を表出させることに成功した。 今後、眼痛に関わるとされる脳/神経領域それぞれについて、薬理/光遺伝学的手法により神経因性疼痛を発症させ、刺激領域、刺激パターンと神経因性疼痛、行動パターンとの相関を明らかにすることで、前眼部-神経因性疼痛モデル系の確立、その発症機序解明につながると考える。
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