動静脈奇形に対する治療薬は未だレパートリーは少なく、動静脈奇形の性状や発症分子機構に基づく治療薬開発を進めていく事が重要である。R2年度においては、動静脈奇形で高発現し、血管新生を正に制御する膜輸送関連分子SNX9のタンパク質分解を担うユビキチンリガーゼ複合体の探索を行なった。具体的には、コムギ無細胞タンパク質合成系で整備されたヒトタンパク質アレイの中から、アルファスクリーンを用いてSNX9に直接結合するタンパク質の探索を試みた。その結果、CUL3型ユビキチンリガーゼ複合体の基質認識受容体の一つであるBTBP-Xの同定に成功した。次に、BTBP-Xの動静脈奇形や各種皮膚疾患の組織における発現を免疫組織染色法により調べたところ、BTBP-Xは血管内皮細胞だけでなく、汗腺や角化細胞に強く発現している事を見出した。特に、日光角化症においては、正常部位と比較してBTBP-Xのタンパク質発現が低下している事が分かった。BTBP-Xが血管内皮細胞及び、角化細胞で重要な機能を発揮している可能性が示唆される。
|