ラット坐骨神経に、神経再生誘導チューブ10mm(近位と遠位の縫い代はそれぞれ1mm)を移植し、8mm欠損モデルとした。sham群(神経剥離のみ)、神経再生誘導チューブ単独群、神経再生誘導チューブ+新鮮ヒト羊膜ラッピング群を、各群5匹、観察期間12週で比較し検討した。筋電図における潜時・複合筋活動電位、電子顕微鏡における再生神経の有髄線維の周径・g-ratio、前脛骨筋線維の横面積に関して、チューブ単独群と比較して新鮮ヒト羊膜ラッピング群では、有意な改善が認められた。一方、再生神経のNF68陽性軸索数とSFIでは有意な改善が認められなかった。新鮮ヒト羊膜ラッピングがラット坐骨神経の再生を促進させることは実証された。末梢神経再生のごく初期段階では、VEGFがマクロファージに作用し、軸索が伸長するための架橋を血管内皮細胞が形成することが知られている。VEGFは乾燥羊膜であっても豊富に含まれることがすでに報告されている。また新鮮ヒト羊膜には羊膜由来間葉系幹細胞が豊富に含まれているが、中枢神経ではこの細胞がVEGFやBDNFを発現し神経再生や血管新生を促すとの報告がある。さらにBDNFは髄鞘化を促進することが報告されている。新鮮ヒト羊膜から直接的あるいは間接的にVEGFとBDNFが作用したことで、末梢神経再生が促進された可能性が示唆された。一方、観察期間内では新鮮ヒト羊膜のラッピングによって運動機能が改善するには至らなかった。さらに新鮮羊膜の保存方法や同種移植の問題など、実臨床で適用するには解決するべき課題が残された。得られた成果を、第65回日本手外科学会学術集会と第31回日本形成外科学会基礎学術集会で発表した。また内容を論文にまとめ、Jornal of Plastic Surgery and Hand Surgery誌に投稿し、acceptされた。近日、掲載される予定である。
|