マイクロサージャリーにより必要とされる組織(皮弁)を体の自由な場所に充填できるようになった。皮弁壊死を阻止するため血管閉塞の早期発見が何よりも重要であり、信頼できる術後血行モニタリングが望まれている。そこで本研究では皮弁の裏面に小型顕微鏡を挿入して微細血管の形状変化をとらえることで血管閉塞を判定する皮弁下挿入式の新しいタイプの血行モニタリングデバイスの開発を目指す。ラットの皮弁裏面の微細血管像を顕微鏡で焦点距離の限界まで近接させて収集し皮弁を栄養する主要血管を閉塞させた前後における皮弁内血管の形状変化の特徴量を抽出し、比較検討する。そして血管閉塞の検知に適した特徴変化を有するかを明らかにする。実際の皮弁のモデルとしてWistar系ラットにおける浅腹壁動静脈が支配領域となる腹部の島状皮弁を利用する。当皮弁モデルの実験にはまず皮弁の裏面を観察対象とする顕微鏡カメラからなる観測器材の組立とシステムの確立が必要である。画像観測は反射光方式とし、照射光は自然光と近赤外光の2種類を採用する。顕微鏡と皮弁の間に焦点距離の高さの透明なガラスを挿入し皮弁裏面に接着させる。2020年度は主に顕微鏡カメラからなる観測器材の組立とシステムの構築を行った。顕微鏡カメラのレンズは被写体にほぼ垂直となるように固定した。顕微鏡カメラの周囲に近赤外光LEDを装着し、被写体を明瞭にとらえる際の光の反射が起こらないような照射の調節を行った。顕微鏡カメラはパソコンと連結し、被写体画像をビデオで記録できるようにした。2021年度は実際にラットの皮弁裏面の微細血管像を撮影しデータ収集を行った。2022年度はデータ収集の追加を行った後、数理解析ソフトMATLABで画像から血管閉塞に伴う血管形状の特徴抽出を行い、モニタリングへの有効性について検討を行った。
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