本研究は3次元で血管やリンパ管を描出できる光音響イメージング装置によって得られた画像から、四肢のリンパ流速度と頻度とを定量的に評価するアルゴリズムを確立・精度検証することを目的としている。 令和3年度はリンパ流を模したファントムの製作及び本ファントムを光音響イメージング装置で撮影した動画を用いた速度算出の精度評価を行った。リンパ流模擬ファントムは中空の細いチューブ内をボーラス状の液体が移動するように構成し、製作した。本ファントムの液体の移動速度は、典型的なリンパ流の速度である10mm/sを含む最大45mm/sまで実現可能であった。またリンパ流模擬ファントムを撮影した光超音波の動画から算出した速度は流速20mm/sまでは±10%程度の誤差に収まることを確認した。このように光超音波動画によるリンパ流の定量評価(速度)の精度を把握することができた。本結果は日本超音波医学会第95回大会で口頭発表を行う。 令和2年度では生体内のリンパ流速度を算出するアルゴリズムの選択を完了しており、本年度はリンパ流模擬ファントムによる光超音波動画からの速度算出精度の評価を実施した。これらの成果を合わせ、生体内のリンパ流の定量的な把握が可能であるという見込みが得られたと判断している。 これまでリンパ管機能の診断は侵襲性のあるリンパシンチグラフィーが用いられていたが、その内容は完全に定量的と言えるものではなかった。本研究の成果により、リンパ管の機能レベルをさらに詳細に定量評価できる可能性を示すことができた。
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