本研究の目的は老化細胞を制御する因子の同定を行うことである。 老化研究を行う際に老齢マウスと若齢マウスを接合し、血流を交差させることで若齢マウスの血液が老齢マウスに与える影響を評価するHeterochronic parabiosisという実験手法が存在する。既存のparabiosisでは皮膚同士をただ縫合することで微小循環を作成しているが、老齢マウスと若年マウスの大血管を吻合することで循環する血液量を既存モデルよりも格段に増加させた新しいparabiosisを行うことで、より若齢の因子が高齢マウスに与える影響を評価できるのではないかと考えた。 ただし、本モデルの作成は非常に侵襲が大きいことから、1週齢や2週齢のマウスに対してSupermicrosurgeryを用いてモデルを作成すると手術侵襲の影響が大きく標準化は困難であった。 しかしながら、より若い因子が本当に老齢マウスにより強い若返り因子を与えるのか評価するために、既存の報告よりもさらに若い1ヶ月齢のマウスと2ヶ月齢のマウスをそれぞれConventionalな方法を用いて老齢マウスに接合を行った。 この若返りの指標は細胞老化関連分泌形質(SASP)と呼ばれるものを評価対象としたが、脳や肝臓、腎臓などのSASP因子の差を比較したところそれぞれの因子に大きな差を生じることはなかった。 すなわち、より若い因子がより強い若返り効果を持つという仮説は否定される可能性がある。しかしながら、SASP因子以外にも老化を評価する指標は多く存在することから、今後多角的な評価を行う必要がある。
|