研究課題/領域番号 |
20K18424
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
松永 宜子 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (20868781)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メカノバイオロジー / 圧刺激 / 線維芽細胞 / ケロイド / 肥厚性瘢痕 |
研究実績の概要 |
伸展刺激や圧刺激がコラーゲン産生や血管新生を誘導して創傷治癒を加速する治療方法を開発した先行研究を参考に、本研究では、自ら産生した細胞外基質に取り囲まれアクチンに富んだ線維芽細胞において、細胞頂上面からの力学的刺激依存的な細胞の増殖・分化の制御機構を解明し、生体の恒常性維持機構を調べる。さらに、その破綻によるコラーゲン線維の過剰産生が引き起こすケロイドや肥厚性瘢痕などの病因についても検討する。 本研究では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)に対する過度な物理的刺激がコラーゲン産生を過剰にする作用機序およびその結果としてケロイドを発症する病因の解明を目的とした。 コラーゲン産生を過剰にする状態は、炎症を起こしている状態であると仮定して、10~100 μMのヒスタミンを投与し、細胞内Ca2+流入や細胞外K+放出などの細胞応答や形態変化を観察した。 その結果、一過性のCa2+流入と同時に、持続的なゆっくりとしたK+放出、特徴的な細胞収縮も観察された。繰り返し伸展や圧刺激を負荷した時も持続的なゆっくりとしたK+放出が同程度同時間で観察されたことから、K+放出が炎症に関与している可能性が見出され、K+チャネル阻害剤を加えたところ、細胞収縮は抑制された。ATP-Ca2+シグナルによって炎症が引き起こされていると予想してきたが、細胞外K+放出が観察されたため、アプローチを変えて再現性確認を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ATP-Ca2+シグナルによって炎症が引き起こされていると予想し、圧刺激負荷に伴う細胞外ATP放出、細胞内カルシウムイオン濃度変化のリアルタイムイメージングを続けてきたが、細胞外カリウムイオン放出が観察されたため、細胞外カリウムイオン放出観察へアプローチを変えて再現性確認を行なっているため。
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今後の研究の推進方策 |
1)非接触超音波圧刺激照射による細胞応答(細胞外カリウムイオン放出)をリアルタイムイメージング観察する。 2)細胞の頂上面(アピカル位)からの圧刺激依存的なアクチンの動態変化とそれに続く細胞の分化方向性について調べる 。具体的には、アクチンを蛍光標識したヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)にアピカル位から非接触集束超音波装置を用いて圧刺激を負荷し て細胞変形や動態を観察する。また、細胞の扁平化を荷重-変位曲線からリアルタイム測定できるインデンターを用いて、アクチンの動態変化などの定量的なメカノトランスダクション機構の解明を試みる。 3)圧刺激が引き起こすヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)のコラーゲン産生能評価を行う。今回見出された細胞外カリウムイオン放出阻害剤共存下でも同様に行う。 4)圧刺激依存の遺伝子の発現変化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想していたATP-Ca2+メカニズムと異なる作用機構が観察されたため、再現性実験を主に繰り返し、ATP-Ca2+シグナリング阻害剤による実験がわずかに遅れたため。
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