研究実績の概要 |
令和三年度は以下の実験を進めた。 実験:軟骨再生におけるコラゲナーゼ処理の有用性と至適コラゲナーゼ処理時間 移植10週目の標本を採取し、各群におけるサフラニンO陽性断面積から再生軟骨量を算出し、比較検討した。その結果、コラゲナーゼ未処理群の再生軟骨量は、本来の軟骨に比較して、約2.5倍増加していた。一方, 15分群、60分群、および120分群の再生軟骨量は、約4倍増加していた。 各実験群における再生軟骨の接着因子、細胞増殖、および分化を評価する目的で免疫染色をおこなった。フィブロネクチン発現を検討した結果、15分群および60分群のマイクロ軟骨周辺部に一致して、フィブロネクチン発現が亢進し、軟骨再生に寄与している機序が示唆された。一方、未処理群では、フィブロネクチン発現は著明に減弱し、120分群では発現が認められなかった。次に細胞増殖マーカーとして選択したKi67の発現を検討した。その結果、未処理群、15分群および60分群のマイクロ軟骨および周辺の再生軟骨領域において、Ki67陽性細胞が観察された。一方、120分群においては、マイクロ軟骨内のKi67陽性細胞は観察されなかったが、再生軟骨領域のみにKi67陽性細胞が認められた。さらに軟骨分化因子であるSOX5の発現を検討した。その結果、60分群において、マイクロ軟骨周囲の再生軟骨領域に数多くのSOX5陽性細胞が観察された。未処理群および120分群では, SOX5陽性細胞が観察されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は自家組織モデルに埋植した組織の取り出しを予定しており、組織標本の検討及び評価を行っていく予定である。実験3では、実験2と同様に、コラゲナーゼを用いてマイクロ軟骨の表面処理を行う。その後マイクロ軟骨をPBSにて洗浄(15分)し, 複合型吸収性ポリマーに播種する。実験群として、播種するマイクロ軟骨量の異なる4群(50, 25, 12.5, 8%)を設定している。作製したマイクロ軟骨・複合型吸収性ポリマーの複合体は、前述のサイトカイン (bFGF-DDS)と組み合わせて自家移植し、10週後取り出し、組織の評価を予定している。
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