研究課題/領域番号 |
20K18426
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
山内 大輔 久留米大学, 医学部, 助教 (80529496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PAT / 血管構築 / 三次元解析 / 透明化標本 / レクチン / 血管内皮細胞 / 二光子励起顕微鏡 / CUBIC |
研究実績の概要 |
近年、Perifascial areolar tissue(PAT)を用いた難治性潰瘍治療が多く報告されている。PATは豊富な血管網を持ち、遊離移植で良好に生着する。また腱・骨露出部の肉芽形成 のない創床や感染創にも生着しうることが特徴である。しかし、このような殆ど血行のない創傷に生着する機序や感染に抗い生着できる理由について組織解析した報告は殆どない。本研究では、PATに血行再開するまでの組織内の経時的変化、感染に強い性質を持つ PATの組織構築の解明、および創傷治癒遅延モデルにおけるPAT移植組織を解析することを目的としており、より安全 な術式を確立するとともに、PATを用いた治療法の適応拡大に貢献することを目指している。初年度は、透明化PAT組織の三次元血管網解析を行なった。この実験系では、ラットおよびヒトPATを採取し透明化処理後に生体深部イメージング技術で血管網の三次元構築を明らかにすることを目的とした。事前調査でラットではCUBICを用いた透明化処理及び蛍光標識したトマトレクチン(LEA)を用いた血管系の描出ができた。同様の手法で、ヒト難治性潰瘍治療の際に生じた、余剰PAT組織を採取し(n=3)、CUBICで透明化処理後LEA染色を施した。ヒトPATはラットPATと比較すると、試料がかなり厚かったため透明化試料作製に時間を要した。また、LEAによる染色自体は可能であったが、二光子顕微鏡で三次元的な画像撮影を行うためには試料の厚さを調整する必要性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定が遅延した理由は2つあった、1つ目は、コロナ禍のため手術の予定が立てられず、ヒトPAT組織の入手が困難であったことである。しかし、事前に採取していたラットPATを用いて透明化標本作製手順を明らかにしていたため、手術再開後に入手できたヒト試料を用いて透明化標本作製手順は遂行できた。遅延の2つ目の理由は、ラット組織に比較してヒト組織が大きかったため、透明化、染色、顕微鏡観察に改良の余地が生じたことである。問題点は抽出できたため、次年度の計画に生かしたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト試料を用いた透明化PAT組織の三次元血管網解析を進める。CUBICを用いた透明化処理後にトマトレクチン(LEA)で染色を施し、生体深部イメージング技術で血管網の三次元構築を明らかにする。顕微鏡観察に供するには試料の厚みや透明化の程度が問題となるため、採取した後に余剰脂肪組織を可及的に除去しサンプルサイズを調整した上で透明化処理を行う。また、現状ではLEAを用いて血管系を描出することを試みているが、イメージング不良の場合は、ハリエニシダレクチン(UEA-I)でも同様の染色を行い、より描出に優れた方を採用する。また次年度以降も、ヒト試料を用いた解析は手術の予定に計画の進捗が左右されるため、ラット組織を用いた解析を優先的に進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は、手術の際に生じた余剰ヒト試料を採取し実験に供するため、手術の予定に計画が左右されたためである。コロナ禍のため、不要不急の手術の予定が立てられない時期があった。次年度以降は、手術予定に左右されないラットを用いた組織解析を優先的に進める予定である。
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